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NICT等提案がセンサーネットワークのIEEE標準基本骨子に採用

滝沢賢一 (たきざわ けんいち) - 無線通信部門 横須賀無線通信研究センター UWB結集型特別グループ 研究員

005年3月、米国アトランタで開催された無線方式の標準化会合(IEEE802.15.4a)において、 NICTを含む共同チーム(表1)が提案した標準方式が基本骨子として採択されました。 この標準方式は超広帯域(Ultra Wideband: UWB)無線通信をベースとしており、 UWB無線通信を用いた世界で初めての標準化成立の第一歩となりました。

表1 共同チームのメンバー構成

日本 NICT, 富士通, 沖電気, 日立製作所, YRPユビキタス・ネットワーキング研究所
アジア Samsung, ETRI, Institute of Infocomm Research, China UWB Forumなど計17団体
欧州 STMicroelectronics, France Telecomなど計11団体
北米 Freescale semiconductor, Time Domain, Staccato Communicationsなど計10団体

IEEE802.15.4aは、米国電気電子学会(IEEE:Institute of Electrical and Electronic Engineers) 標準化作業委員会内に設置されたタスクグループのひとつで、 低速レート・超低消費電力・高精度測距向け無線パーソナルエリアネットワーク (WPAN:Wireless personal area network)物理層の標準化に取り組んでいます(図1)。 低速レート向けWPAN物理層標準としては、2003年5月に標準化作業が終了したIEEE802.15.4がありますが、 IEE802.15.4aはIEEE802.15.4の代替物理層の標準化を行うタスクグループとして2003年7月に発足しました。 そして2005年1月に26もの提案が行われた後、2005年3月にNICT等が提案した標準方式の基本骨子が採択されました。

採択された基本骨子は、NICTをはじめとした共同チームの提案である直接拡散型UWB無線通信方式の採用を前提としています。 この方式は、UWB無線通信が持つ特徴(高精度な距離測定(測距)が可能、低消費電力が実現できる等)に加えて、 直接拡散型が持つ特徴(多くの反射波が受信される環境への耐性が高い、他の無線システムへ与える干渉が少ない等) を持ち合わせています。また、採択された基本骨子では、超低消費電力化を前提とした非常に簡素な受信機構成を持つ端末でも 送受信できる信号形式を採用することを要求しています。これはIEEE802.15.4a物理層がより多くのアプリケーションで利用できるように、 消費電力と通信性能(通信レートや誤り率)の柔軟性を提供できる標準とするための方策です。

このIEEE802.15.4a物理層は、ボタン電池ひとつで数ヶ月以上動作し、大きさはSDメモリカード程度、 30m以下の距離で最高数Mbps程度のデータ速度を実現できるものを想定しています(図2)。 また、数十cm程度の測距精度を持つことから、センサーネットワークとしての応用が期待されています。 センサーネットワークとはセンシング素子(温度、距離、湿度など)と、 さまざまな端末(家電製品や携帯端末など)をつなぐネットワークのことで、 センシング情報を適切に処理することで、家電製品の自動制御、モノや人の追跡および管理、 侵入者探知の防犯技術など、多様な応用が考えられています。 数年後には、わたしたちの身の回りにもIEEE802.15.4a標準を採用したセンサーネットワーク応用が登場するかもしれません。

参考URL: IEEE802.15.4a標準化作業