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独立行政法人 情報通信研究機構 理事長 - 長尾 真

新年明けましておめでとうございます。

昨年は、旧通信総合研究所時代の平成13年度からスタートした中期計画期間の最終年度でありました。それまでの5年間の 研究開発の総仕上げということで皆様それぞれ努力してきたことと存じます。そして、本年4月からいよいよ第二期中期計画期間が スタートします。また、昨年、政府においてNICTの事務・事業の見直し方針が示され、いわゆる非公務員型の独立行政法人への 移行が予定されております。このようにNICTは大きな節目を迎えておりますが、どうか職員全員の一層の努力を期待いたしたいと 存じます。

昨年の主な活動

昨年1年を振り返ってみますと、外国機関との連携活動を含めた外部との係わりが多い年でありました。まず、年明け早々の1月、 中国科学院及び信息産業部電信研究院との間で包括的研究協力に関する覚書を締結しました。その後、6月にはフランス国立 情報処理自動化研究所(INRIA)及び電気通信大学連合(GET)、8月にはインド高度コンピューティング開発センター(C-DAC)、 インドテレマティク開発センター(C-DOT)及びインド工科大学グワハティ校(IITG)との間において、それぞれ同様の覚書を 締結し、今後具体的な研究協力を行っていくところであります。また、高速ディジタルネットワークプロジェクトである JGNIIにつきましては、一昨年の米国回線開通に引き続き、11月にアジア回線(東京-バンコク、東京-シンガポール)が開通し、 開通記念シンポジウムを開催しました。遠隔教育実験が開始され、今後、遠隔医療実験などの共同実験が期待されています。 さらに、5月には小泉純一郎内閣総理大臣が横須賀無線通信研究センターをご視察されるとともに、6月には天皇、皇后両陛下が 鹿島宇宙通信研究センターをご訪問されるという、NICTにとって歴史に残る名誉ある行事が続きましたが、関係の職員の皆様の たいへんな努力によりつつがなく遂行することができました。

研究開発活動につきましては、世界初の毎秒160ギガビットの光パケットスイッチのプロトタイプの開発に成功するとともに、 サイバー攻撃対策として、インターネット上のイベント情報の実時間分析手法の開発、さらには、熱帯降雨観測衛星(TRMM)の 後継衛星(GPM)に搭載する世界初のKa帯衛星搭載レーダエンジニアリングモデルを開発する等、着実に研究開発を進めてきました。また、基礎研究において文部 科学大臣賞若手科学者賞や大阪科学賞を受賞するとともに、研究論文が世界トップクラスの被引用回数を記録する等、優れた 研究実績が出ています。

委託研究につきましては、フォトニックネットワーク技術、量子暗号技術等を中心に産学の研究リソースを活用して推進する ことにより、いわゆる自ら研究を補完するとともに、研究開発推進ユニットの活動を通じて互いの連携も進めました。また、 民間基盤技術研究制度による委託研究につきましては、従来型に加えて、地域中小企業・ベンチャー重点支援型の枠を創設し、 大学と連携した審査体制を取り入れて実施しました。さらに、民間におけるICT事業を支援する助成制度については、 ベンチャー企業や高齢者・障害者向けの情報化を中心とした支援を着実に推進しました。

本年の抱負

我々はユニバーサルコミュニケーションという言葉で画いた情報通信社会の将来像を具体化しながら、その基盤を支える技術に ついて責任をもって研究開発してゆくのだという使命感をしっかりと持つことが必要であります。この使命感を全職員に 持っていただくために、昨年秋にNICTに働く全ての職員の共通理念となるべき「NICT憲章」を制定いたしました。 本年は様々な観点においてNICTの大きな節目を迎える重要な年であります。職員一丸となって、優れた研究成果を国民の目に 見える形で示していかなければなりません。私は、この大きな節目に当たる本年、1) 国の情報通信政策への一層の寄与、 2) 研究開発分野の「選択と集中」の徹底、3) NICTの得意分野の一層の強化と新たな分野への積極的な展開、4) 産学との連携の 一層の強化、の4つの基本的な方針を念頭に置きつつ、最終段階を迎えた第二期中期計画、新しい組織体制についての検討を 完了させ、円滑に移行していけるよう努力し、新年度に新たな気持ちで臨んで参りたいと存じます。皆様のご理解とご支援を お願い申し上げます。