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研究者紹介

電離圏は一番身近な宇宙 観測を積み重ね、通信に影響を与える変動を予測する 電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員 津川卓也

電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員 津川卓也「人の役に立つ研究を」と電離圏観測の研究を開始

地表から高度60〜1000km、大気と宇宙の境界のあたりにあるのが電離圏です。電離圏では太陽からの極端紫外線によって大気の分子・原子の一部が電子とイオンに分離した電離状態になっています。この領域の電子密度が急激に変化すると、人工衛星との通信などに障害が発生します。NICTでは、その前身の組織から数えると60年以上にわたって電離圏の観測を行っており、現在日本国内4か所(稚内、国分寺、山川、沖縄)のほか、東南アジア(タイ、インドネシアなど)と南極にも観測拠点を持っています。

「電離圏の観測に関してNICTは世界トップクラスの設備を持っているんです」と語る津川卓也専攻研究員が電離圏の研究を始めたのは大学院時代。もともと火星に興味を持っていたのですが、もっと身近な宇宙の領域で「人の役に立つ研究をしたい」と考えていたとき、大学院の担当教官からGPSを利用した電離圏観測の研究を勧められたのがきっかけでした。

日常生活にも大いにかかわってくる異常現象の解明・予測を目指す

NICTの宇宙環境計測グループに参加してからは、主に東南アジアにある観測施設を利用した赤道付近の電離圏観測に携わっています。地上から周波数を変えながら電波を発射し、電離圏からエコーが戻ってくる時間を測定して電子密度の高度分布を調べます。

「観測施設は都会から離れた不便な場所にありますが、実際に観測している現場を訪ねることはとても良い経験になります」

赤道域には電子密度が特に高い「赤道異常」と呼ばれる領域があるほか、日没後には「プラズマバブル」と呼ばれる電子密度が低い「穴」が現れます。「赤道付近で発生したプラズマバブルはアーチ状の地球の磁力線に沿って発達します。これが高々度に上がっていき、その端が日本上空にまで達することがあります。そうなると日本でも、GPSの受信や人工衛星との通信ができなくなるという現象が起きます」と語る津川専攻研究員は、こうした異常な現象の発生メカニズムの解明や予測の研究にも取り組んでいます。私たちの生活にも関係してくる電離圏の研究は、日本だけでなく世界の人々にとっても重要な意味を持っています。

Profile

津川卓也津川卓也(つがわ たくや)
電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員
京都大学大学院理学研究科博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員等を経て、2007年12月NICTに入所。電波伝搬に障害を与える電離圏擾乱現象の予測・補正に関する研究に従事。博士(理学)。



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