NICT NEWS
トップページ
−巻頭インタビュー− 「新世代ネットワーク」原井洋明
「私たちの町の大気の流れを測る」関澤信也
−施設紹介− fMRI 宮内哲
「ニューロイメージング・プラットフォーム」藤巻則夫
−研究者紹介− 陣英克
受賞者紹介
−トピックス− Super Computing 2008(SC08)参加報告
リサーチ

ニューロイメージング・プラットフォーム 神経科学のデータベース 未来ICT研究センター バイオICTグループ 主任研究員 藤巻則夫

国際機構INCFの設立

脳神経科学と情報技術の進展に視点をおいたニューロインフォマティクスに関する経済協力開発機構(OECD)の勧告に基づき、2005年にニューロインフォマティックス国際統合機構(INCF)が設立されました。日本では文部科学省の委託を受け、理化学研究所脳科学総合研究センター内に神経基盤情報センター(NIJC)が創設されました。現在NIJCの下に、準備中のものを含めて神経科学に関する10分野の委員会が活動し、プラットフォーム上にデータベースを公開・運用構築しています。

図1 ニューロインフォマティックスの体制

NIMG‐PF委員会

その1つであるニューロイメージング・プラットフォーム(NIMG‐PF)では、非侵襲的脳活動計測のさまざまな方法とその統合化及びそれを使った脳研究にかかわるデータベースを構築しています。既に100以上のデータベースが世の中に存在していますが、その欠けている内容を補うとともに、今後のこの分野の広がりを考慮し、初心者及び専門家向けに、体系的な論文書誌情報、チュートリアル、開発ソフト、実験データ、リンク情報を収集しています。

この活動のため、鈴木良次PF委員長(金沢工大)の下で、全国の関連機関の委員(4幹事、13委員)からなるNIMG‐PF委員会が2005年よりデータベース構築を行っており、2008年3月に、インターネット上で暫定的な公開(関係者以外はユーザ・コンテンツ登録はできないが、閲覧は可能)を開始しました。

ニューロイメージング・プラットフォーム(NIMG-PF)委員会(敬称略)

データベースシステムの構築

NIMG‐PFは、理研NIJCが運用するXooNIps(ズーニプス)基盤プラットフォーム上に構築されています。ユーザは、インデックス、キーワード及びアイテムタイプと呼ばれるカテゴリのいずれかによりコンテンツを検索できます。NIMG‐PFのインデックスは3階層からなり、最上層は方法、チュートリアル、脳機能、実験課題・刺激、脳部位、活動時間・周波数、モデル、技術、リンクからなり、最下層は約200の項目からなります。

公開用コンテンツの登録と検索

NIMG‐PFには、幹事・委員により既に400件以上の公開用コンテンツが登録されています。多数の論文の書誌情報のほかに私の開発によるMEG計測データから脳活動源を推定する逆問題ソフト(fMRI‐constrainedMEG解法)、初心者向けの実験の手引き・ビデオ、実験生データ、ATRの正木博士によるニューロイメージングの解説などが含まれています。産総研の仁木博士によるXooNIps機能拡張の開発により、オンラインで脳画像を表示し、指定した部位の活動を含む論文検索が可能となりました。また、金沢工大の市川教授が開発したsBrainはダウンロードして使用でき、脳構造の3次元表示、検索機能のほか、ダイナミックな脳活動のシミュレーションができます。

図2 NIMG-PFのコンテンツ / 図3 脳画像の可視化

ライセンスなど

ユーザーは、Creative Commonsに従い、商業利用や改変に関する利用許諾条件を設定し、独自のコンテンツを公開用に登録申請できます。公開される内容は、登録者の所属機関の知財に関する許可や、データに個人情報が含まれる場合は被験者の同意が確保されているものに限られます。そしてコンテンツの品質維持の観点から行う審査を通ったものが公開されます。ユーザは利用許諾条件に同意すれば、そのコンテンツを利用できます。

世界的に高まるデータベース構築の機運

2008年9月7〜9日に、INCF主催の第1回Neuroinformatics国際会議がストックホルムで開かれ、270人の神経科学の専門家が集まって活発な議論がなされました。INCFには現在14か国が参加しており、データベース構築の機運が世界的に高まっています。

NIMG‐PFでは、ユーザーはコンテンツを見たりダウンロードしたりして使うことができ、また自分の独自開発した内容を公開することもできます。現在、本格的な公開を目指して準備を進めています。本PFに有用な情報が集まり、脳科学に役立つことを念願しています。

Profile

藤巻則夫藤巻則夫(ふじまき のりお)
未来ICT研究センター バイオICTグループ 主任研究員
大学院修了後、富士通研究所主任研究員を経て、1999年通信総合研究所(現NICT)に入所。言語脳機能及び脳活動計測手法などの研究に従事。九州工業大学生命体工学研究科及び金沢工業大学の客員教授。博士(工学)。



独立行政法人
情報通信研究機構
総合企画部 広報室
広報室メールアドレス
Copylight National Institure of Informationand Communications Technology.All Rights Reserved.
NICT ホームページ 前のページ 次のページ 前のページ 次のページ