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研究者紹介

数値シミュレーションで電離圏の状態を予測 宇宙天気予報のさらなる精度向上につなげたい 電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員 陣英克

電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員 陣英克国内外で重要性が認められつつある電離圏のシミュレーション

地球の周りには、分子や原子で構成される大気圏が地表から高さ800kmまで広がっています。その中性大気の一部は太陽紫外光を受けてイオンと電子に分かれ、電離圏として高度60kmから1000kmくらいに広がっています。電離圏の変動やじょう乱は、人工衛星との通信やGPSなど衛星測位の利用などに大きな影響を与えます。したがって、電離圏を観測し、その状態を予測することは非常に大切です。その前身の組織から数えるとNICTは60年以上にわたって電離圏の観測を続けてきました。一方、近年、スーパーコンピューターなど計算機環境の発達を背景に、数値シミュレーションを利用した電離圏研究の重要性も国内外の研究機関で認められつつあります。

気象の影響を含めた宇宙の天気予報ができるようになる

陣専攻研究員が現在取り組んでいるのは、大気圏‐電離圏の数値シミュレーション。「物理法則の方程式を解いて、地表から超高層までの中性大気と電離大気の状態を計算機で再現する研究です」。この数値モデルは、NICTと九州大学、東北大学が共同で開発しており、陣専攻研究員は大気圏と電離圏の結合部分、つまり中性大気と電離大気との橋渡しを行う部分を担当しています。「電離圏の状態は、降水量の分布など地表付近の気象現象に影響を受けていることが分かってきました。したがって、電離圏と下層大気をつなげることはとても重要です。この研究が完成すれば、地表から電離圏までを連続したシミュレーションで再現し、電離圏の変動を数値で予測することが可能になります」。

現在までの成果としては、電離圏の激しい日々の変動や空間分布など、これまで再現できなかった下層大気の影響がシミュレーションで再現できるようになり、実際に観測される電離圏に近づいてきたところです。ただし、現時点では大気圏から電離圏へ一方向の影響のみを取り入れたところで、今後、双方向のやりとりを計算に組み込んでいくとのことです。「連続したシミュレーションを行い、予測の精度を上げていけば、将来的には気象の影響を含めた宇宙の天気予報ができるようになると思います」と陣専攻研究員は語っています。

Profile

陣英克陣英克(じん ひでかつ)
電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 専攻研究員
大学院博士課程修了後、2004年NICTに入所。大気圏‐電離圏シミュレーションモデルの開発に関する研究に従事。博士(理学)。



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