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超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS) 世界を結ぶ「きずな」 新世代ワイヤレス研究センター 宇宙通信ネットワークグループ 研究マネージャー 高橋卓

高速衛星通信システムの構築に関する技術実証

超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)は、政府IT戦略本部の「e‐Japan重点計画」における高度情報通信ネットワークの形成にかかわる研究開発の一環として、高速衛星通信システムの構築に関する技術実証を行うための衛星です。

WINDSは情報通信研究機構(NICT)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)により共同で開発が行われ、2008年2月23日にH‐UAロケットにより打ち上げられました。

本稿ではWINDS衛星通信システムの概要と実験計画について紹介します。

WINDS

WINDSには衛星上で高速スイッチングが可能な再生交換機を搭載しています。再生交換機は地球局から送信された信号を衛星で復調、交換し、再度変調をかけて地球局に送信するものです。再生交換機により、衛星から地上へ送信されるダウンリンク信号を多重化することができ、またビーム間交換することにより、衛星リソースの効率的利用が可能となっています。

WINDS衛星通信網では、再生交換中継回線を使用することにより1ビームあたり伝送速度155Mbps、再生交換機をバイパスしたベントパイプ中継では最高1.2Gbpsの衛星通信回線能力があります。

WINDSを使用することで、図1に利用イメージを示すように、災害時の通信確保、マルチメディア同報サービス、島しょや山間部への高速衛星通信回線の提供、一時的に臨時回線を設定するサービス等への検証が期待されています。

図1 WINDSの利用イメージ

WINDSでは、高速衛星通信技術検証のために搭載再生交換機のほかにもマルチビームアンテナ(MBA)/マルチポートアンプ(MPA)、広域電子走査アンテナ(APAA)なども開発され搭載されています。

図2にWINDSの外観及び主要諸元を示します。WINDSには2種類のアンテナ(MBAとAPAA)を搭載しています。通信には周波数帯域を広く確保できるKa帯(28GHz/18GHz帯)を使用しているため、ビームを狭くでき、マルチビームシステムを構成しやすくしています。

図3にサービスエリアを示します。MBAでは沖縄を含む日本を9ビームでカバーし、その他のビームがアジア10都市をカバーします。また、APAAはアジア太平洋地域を広く走査することが可能で、この中で送受各2ビームを使用することが可能です。

図2 WINDSの外観と主要諸元

図3 WINDSカバーエリア

WINDS実験計画

WINDSでは衛星開発機関(NICT、JAXA)が実施する基本実験と、総務省が広く一般に公募し採択された利用実験が計画されています。

WINDSは2008年2月の打ち上げの後、6月まで初期機能確認を実施し、打ち上げ後軌道上でのWINDSの主要機能性能が維持されていることが確認されました。7月から基本実験が開始され、9月までにWINDS衛星通信網が利用実験に供せられることが確認されています。10月からは基本実験と並行して利用実験が開始されています。

NICTでは、衛星搭載機器性能確認実験、降雨減衰補償実験などの基本伝送実験、プロトコル評価実験などの高速衛星ネットワーク実験、地上網との接続実験などのネットワーク・アプリケーション実験を計画しています。これらの実験を実施するために、NICTでは大型地球局(アンテナ径4.8m)、超高速小型地球局(アンテナ径2.4m)を開発しました(図4)。

図4 大型地球局と超高速小型地球局

これらのほかに高速小型地球局(アンテナ径1.2m)、超小型地球局(アンテナ径0.45m)をJAXAが開発しています。

利用実験は日本、タイ、フィリピンなどから53件が採択され、国際共同実験は30件に及びます。利用実験分野は電波伝搬に関する実験、防災に関する実験、遠隔医療に関する実験、遠隔教育に関する実験などが提案されています。NICT、JAXAが開発した地球局は利用実験に貸与することも可能となっており、利用実験の推進に貢献します。

通信衛星技術の確立を期待

NICTとJAXAで開発したWINDSは2008年2月に打ち上げられ、現在はWINDSを使用して各種基本実験及び利用実験が行われています。国際共同実験などにより、衛星通信技術の検証及び新しいアプリケーションの創造により、次世代の通信衛星技術の確立を目指しています。


Profile

小山泰弘 高橋卓(たかはし たかし)
新世代ワイヤレス研究センター 宇宙通信ネットワークグループ
研究マネージャー
大学院修士課程終了後、1991年通信総合研究所(現NICT)に入所。ETS-Y、COMETS、WINDSを用いた高速衛星通信などの研究に従事。



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