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NICT 神戸研究所 開設20周年記念シンポジウムを開催
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原子分解能を有する溶液中動作型原子間力顕微鏡の開発 田中 秀吉
研究者紹介 岩本 政明
テラヘルツ領域の開拓 阪井 清美
-トピックス- NAB テクノロジー イノベーション アウォードを受賞
-トピックス- サロベツ電波観測施設開所式を開催
平成21年度 施設一般公開のお知らせ
神戸研究所開設20周年記念特集

神戸研究所開設20周年に寄せて テラヘルツ領域の開拓 阪井 清美

最後の未開拓領域と呼ばれてきた“光と電波の境界領域”が今“テラヘルツ”の名で脚光を浴びています。現在の定義では周波数100GHz-10 THzの領域を指しています。私は大阪大学工学部のその草分けとなる研究室で研究生活をスタートさせましたので、この領域の研究がライフワークにもなっています。1990年に、新しく出来たこのKARCの一員になってからは、新しい量子エレクトロニクスの研究を始めました。1990年代に入って固体のフェムト秒レーザーが市販され、1984年に米国のオーストン博士が端緒を開いた“光伝導スイッチを超短光パルスで励起してテラヘルツ(以後THz)波を送・受信する手法”が世界中に急速に広がり、私自身もいち早くこれを研究室のテーマとして取り上げました。非線形光学法や、2002年に初めて発振に成功したTHz量子カスケードレーザーとともに、最近の革新的電磁波技術の根幹をなしていて関連学会は大盛況です。ここで、光伝導スイッチも量子カスケードレーザーも、我が国ではNICTがイニシアティブをとった事を付け加えておきます。
 1990年以前のこの領域の電磁波の応用は、固体や分子の研究、宇宙科学、プラズマ診断などで、2006年度のノーベル物理学賞 “宇宙背景放射の観測”は、まさにこの領域のテクノロジーを駆使してなしえたものであります。1990年以降の応用は、分光とともにイメージング技術も積極的に利用され、セキュリティー、ナノ材料分析、バイオ及び医用、農作物・食品、環境リモートセンシングなど多岐にわたっていますが、今後注力すべきは通信、新物質及びバイオ関連だろうと思っています。通信に関しては最近、有線と無線の速度差が急速に縮まり、近接無線を指向した新たなる潮流が始まっています。また世界では既にTHz無線に向けて検討が始まっています。
 2003年にはテラヘルツテクノロジーをできるだけ速やかに産業に応用すべく、産・官・学からなる“テラヘルツテクノロジーフォーラム”を他の組織に先駆けて設立いたしました。NICT、アイシン精機、テクノバさんには多くの部分でお世話になっています。
 最後になりましたが、この神戸研究所で気持ちよく、思いっきり研究させていただいた事に心より感謝しています。またその成果をドイツのシュプリンガー社と共同で、K. Sakai (ed.) : Terahertz Optoelectronics (Springer, Berlin, 2005)(写真)として出版できた事は、何物にも代えられない贈り物を頂いたと思っています。




Profile

阪井 清美(さかい きよみ)
大阪大学工学部助教授から、1990年通信総合研究所(現NICT)入所。第2特別研究室長。テラヘルツテクノロジーに関する研究に従事。2000年退官。SCAT参与。テラヘルツテクノロジーフォーラム会長。福井大学遠赤外領域開発研究センター客員教授。現在もNICT短時間専門研究員として神戸研究所に在籍。博士(工学)。

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