NICT NEWS

新年明けましておめでとうございます。

我が国は、少子高齢化が進展する中、一昨年の金融危機に端を発した経済の低迷からなかなか抜け出せない状況にあります。国の財政も厳しい状態となり、我が国の科学技術を取り巻く環境も例外ではありません。しかし、一方で、このような状態は、新しい社会構造を生み出す変革の好機にもなるのではないでしょうか。

情報通信分野の研究開発においては、我が国の将来に希望をつないでいく、新たな研究の芽が随所に芽生え出しています。NICTの役割は、こうした将来花を咲かせる可能性のある芽を丹念に育て上げ、広く将来へのビジョンや道筋を描くと同時に、我が国の社会で必要とされるICTとしての成長と社会での利用を推進させていくことにあると思います。

そのためには、個々の優れた要素技術と社会の中で活用されるシステムイメージを結びつけた研究を行うことが大切と考えます。これからはシステム的な研究を遂行できるように体制を変革し、産学官の連携の推進において重要な役割を果たすよう努力していきます。

さて、昨年のNICTは、うるう秒の挿入で元旦を迎えました。また、日本国内で皆既日食が観測された際には、電離層の観測や日食映像の中継など様々な取り組みを行いました。奄美大島で観測された皆既日食の映像を全天球的に撮影・伝送し、「JGN2plus」を用いて、遠く離れた会場のプラネタリウムに映写し、あたかもその場にいるような迫力ある上映を行うことができました。また、超高速インターネット衛星「きずな」を介した硫黄島からの皆既日食の中継映像は、テレビでも取り上げられましたので、ご覧になった方も多いのではないかと思います。

また、電波を利用したリモートセンシング技術では、世界最高の精度で、天候や昼夜に左右されず地表面の画像を取得する航空機搭載型の合成開口レーダの開発等の功績が認められ、NICTの首席研究統括増子治信が紫綬褒章を受章するに至ったことは、NICTの研究開発の社会的意義が広く認められた証として、他の研究者の励みにもなりました。雨や雲の分布といった地球環境計測の上でも重要なこのリモートセンシング技術を、国内で、開発し維持できるのはNICTだけなのです。

個別の研究課題では、テラヘルツ波などのあまり開拓されていない周波数帯の開拓に取り組み、これを活用して食品など様々な物質の内部を分析できないか、古典絵画などの非破壊検査に応用できないかなどの検討を進めているところです。現代の情報通信と人間との関わり合いを研究し、ICTの高度化や問題点を脳の研究により明らかにする脳情報通信融合をNICTの重点研究課題に設定し、他の研究開発機関との連携を中心とする産学官連携の共同研究も開始しました。

また、私自身が本部長として取り組んでいる「新世代ネットワーク」の研究開発ですが、2008年に作成した「新世代ネットワーク・ビジョン」に向かって、昨年暮れに、開発ターゲットと研究課題を集約しました。これらの成果を基本として、今後は、他の研究開発機関や各国との連携を進めるとともに、新世代ネットワーク推進フォーラムにおいて、産学官の連携で進める課題、国際戦略などについて議論を進めていきます。

今年は、NICTの第二期中期計画期間の最終年度を迎えます。計画の達成に尽力し、研究開発成果を国民の目から見て分かりやすいものとするように努めるとともに、第三期中期計画の策定に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

NICTから発信される情報通信分野の研究開発成果が、我が国の将来の成長の糧となるとともに、地球環境や世界の人口、食糧問題などの社会的課題の解決に役立つように努力していきたいと考えています。

最後になりましたが、本年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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