NICT NEWS
2011年 頭のご挨拶 独立行政法人情報通信研究機構 理事長 宮原 秀夫

新年明けましておめでとうございます。

我が国は、低迷している経済状況が、なかなか持ち直さない状況が続いています。科学技術を取り巻く環境も厳しさを増しており、独立行政法人をめぐる状況もニュース等で報道されているとおり必ずしも芳しいものではありません。昨今は、あまりにも短期的な成果のみを追求する効率主義が、悲観的な世相を生み出し、将来の成長の芽を萎縮させているように思います。こうした情勢だからこそ、研究者は自らの研究が現在どの位置にあるかをしっかりと見据えて、将来の発展の方向性を見極め、自信と誇りを持って研究に取り組んでいただきたいと思っています。

情報通信の研究開発の分野では、我が国の個々の要素技術は世界の中でも大変高い競争力を持っていると思いますが、システムの段階になるとやや見劣りしてきます。それぞれの要素技術を集約・統合して、具体的システムを作り上げるところまでフォローすることが必要です。NICTでは、研究機構内の研究課題の集約・統合と大学や民間の研究機関との連携を行い、新しい機能を有するシステムを作り出すプロジェクト研究に重点を置いて取り組んでいきます。このような研究活動を通して、将来の発展の方向性を示すことが、社会へのNICTのアカウンタビリティを果たすことになるのだと考えています。

科学とは、すでに存在しているものにある普遍的な法則を探求すること、あるいは解析することと言ってもいいかもしれません。それに対して、技術とは、新しい機能を実現する具体的な方法を案出し、作り上げ、利用すること、設計することと言ってもいいかもしれません。そしてこれらが、表裏一体となって、車の両輪のように機能する事によって、科学技術が推進されていると考えています。最近は、この科学と技術が乖離しているように感じます。真に価値のある科学技術を創造するためには、科学と技術の融合が強く求められ、異なる研究分野にまたがる、学際融合分野の研究が重要になります。現状のシステムをモデル化し、数学的解析を行い、システムの性質を抽出し、新しいモデルを作るといった一定のサイクルが必要で、このサイクルによってイノベーションが創出されると考えます。NICTは、科学と技術の融合により根本的な科学技術の開発を行い、真の文化を創造する研究機関になっていきたいと念じています。

NICTでは、今年の4月から、新たな研究開発期間となる第3期中期計画がスタートします。急激に変化する社会情勢の中で、真に社会の中で必要とされる科学技術の将来をしっかりと捉え、新たな気持ちで研究活動を開始したいと思っています。そして、NICTが発信する情報通信分野の研究開発成果が我が国の将来の成長の糧となるとともに、地球環境や世界の人口、食糧問題などの社会的課題の解決に役立つように努力していきたいと考えています。

最後になりましたが、本年が皆様にとって素晴らしい年になりますよう祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

独立行政法人
情報通信研究機構
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