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フェロー紹介

NICTでは、職務として行った研究開発の業務において、特に顕著な業績があると認められる者にフェローの称号を授与することとしており、平成23年4月21日、井口俊夫電磁波計測研究所長及び王鎮未来ICT研究所主管研究員に称号を授与いたしました。

井口研究所長は、カナダ国ヨーク大学大学院博士課程を修了後、Unisearch Associates Inc. 上級研究員を経て、郵政省電波研究所(当時)に入所し、以来ほぼ一貫して電波を利用したリモートセンシング技術の研究を行ってきました。

熱帯降雨観測計画(TRMM)から全球降水観測計画(GPM)へと続く人工衛星による降水の3次元構造の観測計画においては、我が国における主導的研究者として、研究立案やシステム開発に携わってきました。

特に、TRMM計画においては、衛星搭載の降雨レーダのデータから高精度な3次元の降雨分布を推定するアルゴリズムを開発し、米航空宇宙局(NASA)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)での標準処理アルゴリズムとして採用されました。このアルゴリズムを用いてデータを処理することにより、それまで検知が不可能であった洋上や未開拓地域等での降雨の3次元分布構造を正確に把握することが可能となりました。TRMMによる降雨観測は1997年以来十数年にわたり継続しており、米国に深刻な被害をもたらしたハリケーンカトリーナの観測及びその進路予測精度改善など様々な成果を挙げています。この長年にわたる観測結果は、天気予報や洪水予報・警報、台風・ハリケーンの進路予報などの改善に繋がっているほか、熱帯・亜熱帯における降水システムの理解の深化に大きく貢献しています。

井口俊夫電磁波計測研究所長(左)と宮原秀夫理事長
●井口俊夫電磁波計測研究所長(左)と宮原秀夫理事長

王鎮未来ICT研究所主管研究員(左)と宮原秀夫理事長
●王鎮未来ICT研究所主管研究員(左)と宮原秀夫理事長

王主管研究員は、長岡技術科学大学大学院工学研究科電気電子情報工学博士課程を修了後、郵政省通信総合研究所(当時)に入所し、以来ほぼ一貫して超伝導現象を利用したデバイス開発の研究を行ってきました。

その中で、窒化ニオブ薄膜・デバイス技術を主導的研究者として研究立案からデバイス開発、システム応用まで中心となり実施してきました。この技術は、優れた特性を持ちながら応用範囲が限定されていた窒化ニオブを実用化へ向ける大きなブレークスルーとなり、高感度・低雑音のテラヘルツ帯受信機や超伝導量子ビットデバイス、高速・低雑音・広帯域の超伝導ナノワイヤ単一光子検出器などの開発へと広く応用されました。

特に、開発した窒化ニオブ超伝導電磁波受信機を世界で初めて電波天文観測へ応用することに成功しました。また、窒化ニオブを用いた量子ビットデバイスは、固体デバイスとして世界で最も長いデコヒーレンスタイムを達成、近年、長年にわたり蓄積した窒化ニオブ薄膜作製技術とナノ微細加工技術を融合し、世界最高性能のマルチチャンネル超伝導単一光子検出システムを開発すると共に、この検出器を用いて国内で初めて行なわれた量子暗号鍵配送実験を成功に導き、量子暗号鍵配送の世界記録の達成に貢献しました。この一連の技術開発は当該分野の発展にも大きく貢献し、今後、様々な応用分野の開拓及び産業応用にも期待されています。

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