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超多視点立体映像の圧縮符号化方式の研究

裸眼立体映像技術

ユニバーサルコミュニケーション研究所では、超臨場感コミュニケーション技術の研究開発を2006年から進めてきています。最初の5年間は、主に特別な眼鏡をかけることなく立体映像を見る事ができる裸眼立体ディスプレイ技術の研究開発を進め、大画面(200インチ)のディスプレイを開発しました。現在はこのディスプレイに表示するための撮影技術、および遠隔地から立体映像を伝送するための伝送技術の研究開発を進めています。本稿では、特に裸眼立体映像を遠隔地から伝送するための圧縮符号化技術の概要について紹介します。

200インチ裸眼立体ディスプレイ

NICTが開発した200インチ裸眼立体ディスプレイ(図1)では約200視点の多視点映像が表示可能で、視域角40度の範囲内であれば見る人が左右に動くとその位置に応じて違った映像を見ることができます。

図1 200インチ裸眼立体ディスプレイの概観
図1 200インチ裸眼立体ディスプレイの概観

また、各視点映像はフルハイビジョン(1,080×1,920画素)の解像度を持っており、さらに毎秒60枚の速度で動画が表示できます。そのため、本ディスプレイに映像を表示するためには、フルハイビジョン映像の視点数倍(約200倍)もの映像データを毎秒60枚伝送する必要があります。現在、200視点のような超多視点の映像を伝送する技術は確立されておらず、このような超多視点映像を圧縮符号化して伝送する技術の開発が必要になります。

圧縮符号化技術

多視点映像の特徴として、例えば図1の車の映像はドア部分に注目すると図2に示すように、少しずつ違いますが、近い視点の映像はほぼ類似しているという特徴があります。

図2 視点映像の例
図2 視点映像の例

圧縮符号化技術として、これらの類似性を利用して差分情報だけを送ることで、大きな圧縮効率が得られると考えられます。そこで、我々はこのような差分に注目して、差分を活用する圧縮符号化方式の研究開発を実施しています。図3に受信側での処理概要を示します。送信側では、数視点分のオリジナル映像と視点間の差分データを送信することを示しています。図3を例にすると、3視点分のオリジナル映像と2視点分の差分データが送信されます。受信側では差分データが送られてきた視点位置の映像を、送られてきたオリジナル映像と差分データから復元しています。シミュレーション実験の結果、200視点分のフルハイビジョンの映像を伝送するのに1/5程度のデータ量に削減して伝送しても実用的な画質が実現できる見込みを得ることができました。そこで現在はハードウェア実装の方法を検討しています。

図3 受信側における復元処理の概要
図3 受信側における復元処理の概要

井ノ上 直己 井ノ上 直己(いのうえ なおみ)
ユニバーサルコミュニケーション研究所 副研究所長

大学院修士課程修了後、1984年、KDD(現、KDDI)入社。2006年、ATR認知情報科学研究所所長を経て、NICT入所。音声認識、情報検索/情報フィルタリング、グラフィック処理、3D映像、3D音響、およびこれら技術の携帯端末向け応用などに関する研究に従事。博士(工学)。
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