ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

98■概要当室では、最先端のICTを実基盤上に展開して実現性の高い技術検証を行うための大規模実基盤テストベッドと、模擬された基盤を一部組み合わせることで多様な環境下での技術検証を行うための大規模エミュレーション基盤テストベッドについて、それらの実現に求められる研究開発を実施するとともに、基盤環境の構築、運用を行っている。今中長期の目標としては、大規模実基盤テストベッドについて、超高速通信環境における多様な通信に対応したネットワーク制御や大容量高精細モニタリング、分散配置されたコンピューティング資源及びネットワーク資源の統合化等の実証基盤技術の確立を掲げている。初年度となる平成28年度は、100 Gbpsを超えるような超高速ネットワークを性能目標として高精度なモニタリングを実現するための並列アーキテクチャの開発、IoTテストベッド実現に向けたゲートウェイによるユーザ機器接続機能及び計算機資源提供の高度化、超広帯域ネットワークアプリケーションによる実証実験等に取り組んだ。なお、大規模エミュレーション基盤テストベッドについては、3.11.2.3北陸StarBED技術センターを参照いただきたい。1 . 超高速ネットワークにおけるモニタリングのための並列アーキテクチャの開発超多数の機器が社会に広く展開、ネットワークに接続され、ビッグデータ処理を伴うIoTサービスを提供可能にするためには、その管理手法の確立が不可欠である。IoTでは機器側の能力に制約があることが多く、またその数が膨大であることから、IoT機器が接続されるネットワークにおいて管理機能を担うことができる仕組みが期待されている。このネットワークにおける管理機能を実現する重要な技術の1 つがモニタリング技術である。IoTモニタリングは、観測地点数が膨大となるIoT機器に近いアクセスネットワークではなく、バックボーンネットワークで一括的に実現できれば、管理コストの低減につながる。そこで当室では、超高速ネットワークで多数のデータフローを個々に高精度でモニタリングすることのできる仕組みの研究開発を行っている。こうしたモニタリング技術は、IoTの管理機能として有用なだけでなく、テストベッド機能としても有用であり、各種実証実験において検証対象の振る舞いを評価するために必須の機能である。平成28年度は、近い将来普及が期待されている400Gbpsネットワークでの高精度なモニタリングを想定し、パケット蓄積及び実時間解析の並列アーキテクチャを神奈川工科大他との共同研究により開発した(図1 )。FPGAハードウエアのシミュレーションやOSSによるシステム評価を通じて、16並列度でのハードウエア処理部により、求められる性能の実現が可能という検討結果を得た。その一方で、既存OSSではソフトウェア処理部の性能に課題があることを明らかにした。2 . IoTテストベッド実現に向けたゲートウェイによるユーザ機器接続機能及び計算機資源提供の高度化テストベッドを用いたIoT技術の実証実験では、それを支える基盤技術の検証に加え、ユーザと直接的な接点となるサービス技術やその利用に伴う社会への影響の検証にも焦点を当てたものも多い。その場合、実証実験のための基盤環境構築のコストを小さくし、サービス実証や社会実証により注力できるようにすることが求められる。そこで当室では、簡易かつ柔軟なテストベッド基盤環境構築を実現するため、テストベッド基盤の資源管理のテストベッド研究開発運用室室長  河合 栄治 ほか16名3.11.2.2技術実証、社会実証に対応したテストベッドの研究・開発・運用図1 400 Gbpsネットワークモニタリングアーキテクチャ低速I/F汎用IPコア400GbEマルチレーン波長分離PCS※からパケットを復元分散データ配置および解析FPGAハードウエアのシミュレーションにより性能を評価STORMによる解析処理を想定したデータ配置のプロトタイプを実装しシステム評価※ Physical Coding Sublayerパケットを64bitで分割しパラレル伝送する層