ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

1013  ●オープンイノベーション推進本部3.11.2 総合テストベッド研究開発推進センター1 .IoTデバイスの模倣基盤の確立IoT技術は多種多様なデバイス上で動作し、また、それぞれの技術が動作するネットワーク環境に存在するデバイス数はICT環境と比較してはるかに多い。このような環境を構築するために、複数種類のIoTデバイスを仮想技術によりソフトウェア的に再現し、汎用的なPC上で動作させることで、デバイスのバリエーションやその割合、そして環境全体の規模を柔軟に変更可能とするアプローチを採用した。本年度は既存のAndroidエミュレータを多数動作させるフレームワークとしてGigandroidの開発を行うとともに、IoT技術に利用されることが多いアーキテクチャのリファレンスボードをソフトウェア的に再現した。具体的には、ARMプロセッサを搭載したAtmel SAMD21(ARM Cortex M0+)及びNXP KinetisK64 120 MHz(ARM Cortex M4)の2 種類の仮想マシンを開発し、それぞれで動作するソフトウェアをStarBED上の検証環境に導入することを可能とした。2 .物理量場シミュレーションとの連携機構の構築センサー等のIoTデバイスは、温度や湿度といった物理量を検知し、そのデータをサーバに送る等の動作を行うため、検証環境でもこのような物理量場の導入は必須となる。そこで、StarBED2プロジェクトで構築したRUNEを汎用化するとともに、上記のIoTデバイスの仮想マシンとの連携を行いやすい形に修正し、さらに、最近のプログラム言語と容易に連携しやすいよう拡張を行った。これにより、物理量場のシミュレーション空間とその入出力を接続し、相互の影響がリアルタイムに影響するようなシミュレーション場を構築、さらには、その結果を模倣IoTデバイス及びStarBED上に構築したエミュレーション環境へ入力することを可能とした。3 .IoT技術が前提とする無線環境の模倣技術StarBED2プロジェクトでは、ユビキタスネットワークをキーワードとしてStarBEDの有線環境上に特定の無線プロトコルの挙動をも模倣し、PC上で動作しているソフトウェアからはネットワーク部分が無線環境であるように見せかける技術を構築してきた。本技術を利用することで、コストが高い無線技術のフィールド検証の頻度を低減し、さらに、実験結果の再現性を確保できる。無線空間は、これまでシミュレーションの結果を単純に有線ネットワークインターフェースのパラメータとして適用していたが、本年度はRadio Frameの動作をモデル化し再現するプログラムNEToriumを開発、現実的な挙動を模した無線ネットワークの再現を可能とした。4 . 既存シミュレータとICT技術の検証基盤のリアルタイム統合人流や災害時の地形等の変化のシミュレーションについては、東日本大震災以降、様々な組織が様々な手法を用いて研究開発を進めている。StarBEDにおけるIoTテストベッドにも人流等の特性を取り入れることで、より具体的かつ実用性の高い検証を実施できるが、新たにシミュレータやそのモデルを構築するコストは低くない。そこで、既存のシミュレータとStarBED上に構築したエミュレーション環境をリアルタイムに接合し、それぞれで発生したイベントを共有することで、ICT基盤から人の動きまでをカバーする実証基盤を構築するためのプラットフォームを構築した。図2 に示すように、構造計画研究所が開発しているマルチエージェントシミュレータArtisocのプラグインとしてシミュレータ内部の任意の位置の情報を取り出し、さらに、ICT環境上でのイベントを入力するシステムとして実装を行った。これらはすべて初年度のプロトタイプとして実装したものであり、今後動作検証とその改良を進めるとともに、さらには、より汎用的に多くの実験者が利用可能なオープンテストベッドの一部として提供できるよう開発を進めていく。今後もStarBEDプロジェクトでは実用的なテストベッドを広く活用してもらえるような環境構築のための研究開発と運用を続けていく。図2 マルチエージェントシミュレータとStarBED模倣環境の接合