ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

31序説1.1 概要1.2 組織及び業務いる諸課題の改善、解決に貢献するとともに将来にわたって高品質で高信頼なネットワークを支えていくために、ネットワーク基盤技術の研究開発を実施した。データ利活用基盤分野の「ユニバーサルコミュニケーション研究所」、「脳情報通信融合研究センター」、「先進的音声翻訳研究開発推進センター」は、「創る」をテーマとして、真に人との親和性の高いコミュニケーション技術を創造し、国民生活の利便性の向上や豊かで安心な社会の構築等に貢献することを目指して、AI技術を利用した多言語音声翻訳技術、社会における問題とそれに関連する情報を発見する社会知解析技術、脳情報通信技術などの研究開発を実施した。サイバーセキュリティ分野の「サイバーセキュリティ研究所」では、「守る」をテーマとして、サイバー攻撃に実践的に対抗する次世代のサイバー攻撃分析技術、社会の安心・安全を理論面から支える暗号技術などの研究開発を実施した。フロンティア研究分野の「未来ICT研究所」では、「拓く」をテーマとして、未来の情報通信の基礎となる新概念を創出し、情報通信技術の新たな道筋を開拓していくため、未来ICT基盤技術の研究開発を実施した。「オープンイノベーション推進本部」では、研究開発成果を最大化する業務として、技術実証と社会実証の一体的推進が可能なテストベッド構築・運用、オープンイノベーション創出に向けた産学官連携等の取組、耐災害ICTの実現に向けた取組、戦略的な標準化活動の推進、研究開発成果の国際展開、サイバーセキュリティに関する演習などを実施した。この他、国立研究開発法人情報通信研究機構法に基づく業務として、標準電波の発射、標準時の通報、宇宙天気予報、無線設備の機器の試験及び較正を実施した。さらに、研究支援・事業振興業務として、海外研究者の招へい、情報通信ベンチャー企業の事業化支援、ICT人材の育成等を実施した。以上のように、第4 期中長期計画においては、5 つの研究分野における基礎・基盤技術の研究開発業務と、研究開発成果を最大化して社会展開するための業務を両輪として実施しており、その初年度である平成28年度においては、新たに開始された研究開発プロジェクトを軌道に乗せ、オープンイノベーションを実現するための体制を確立した。また、研究開発支援をはじめとする各種支援や成果展開、国内外の他機関との連携等の業務も行ってきた。以下に、本年度の主な業務成果を示す。なお、各成果の詳細については、「3活動状況」に示す。(1)センシング基盤分野①「リモートセンシング技術」では、国民生活に有用な気象や災害状況等の観測・情報提供に向けて、地上デジタル放送波の伝搬遅延観測による水蒸気量推定の新しい観測技術を実証し、システムのパッケージ化を実施した。衛星搭載ドップラー風ライダーでは、コアの要素技術となるパルスレーザー高出力化の世界記録を達成した。航空機搭載合成開口レーダーでは、平成28年4 月に発生した熊本地震の被害状況について緊急観測を実施し、結果が複数の災害対策関連機関で活用された。非破壊センシング技術では、企業と共同で赤外イメージング法の有効性を実証した。欧州宇宙機関との連携で進めている木星圏探査計画及びテラヘルツ帯観測装置では、アンテナ系のエンジニアリングモデルを製造した。②「宇宙環境計測技術」では、測位・通信利用者等に対する高精度宇宙天気予報の実現を目指して、人工知能(AI)による太陽フレアの予測モデルを開発し、世界トップレベルの予報精度を達成した。新型電離圏観測装置の検証を行い、試験運用を開始した。大気圏電離圏統合モデル及びプラズマバブルモデルの高精度化では、それぞれ従来の3 倍及び2 倍以上の解像度のシミュレーションを実現した。衛星への磁気嵐の影響対策のための研究では、気象衛星ひまわり8 号からのデータを元にした宇宙環境データベースを公開し、磁気圏擾乱の情報を広く共有するとともに、予測モデルを開発した。③「電磁波計測基盤技術(時空標準技術)」では、日本標準時の発生及び供給を24時間365日安定に運用した。また、平成29年元旦には「うるう秒」挿入を実施した。より高精度な時刻・周波数標準の実現に向けた取組では、周波数絶対値の校正精度を高める測定法を確立するとともに、ストロンチウム光時計を利用した高確度原子時系を世界に先駆けて実現した。テラヘルツ帯周波数標準では、テラヘルツ基準周波数を18桁の精度で位相コヒーレントに20 km伝送する技術を開発した。無線双方向時刻同期技術(ワイワイ)では、屋内でピコ秒の計測精度を実証するとともに、モジュール試作品を開発し、屋外測量等への活用に向けた実証実験を開始した。④「電磁波計測基盤技術(電磁環境技術)」では、先端EMC計測において、30 MHz以下の放射妨害波測定用アンテナ校正法を開発し、国際標準化を主導した。220~330 GHz電力標準の開発(産業技術総合研究所との共同研究)では、較正系の構築に世界初で成功した。生体EMC技術では、テラヘルツ帯電波の吸収量の生体組織・水分量依存性を初めて解明した。また、電気自動車用ワイヤレス電力伝送装置の非接触電流評価手法について、実車検証に世界初で成功し、国際標準化へ寄与した。