ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

102■概要耐災害ICT研究センターは、平成23年の東日本大震災において発生した通信ネットワークの障害を教訓として、災害に強いICTの研究開発を産学官連携体制の下で、被災地に研究拠点を設置して実施することを目的に平成24年度に仙台市に設置された。第4 期中長期目標期間を迎え、災害に強いネットワーク技術開発とともに、成果の社会実装を促進し、併せて連携体制の強化、地域における拠点機能の強化を図る。また、今中長期目標期間から当センターは、組織上オープンイノベーション推進本部の中に位置付けられ、他の領域における成果の社会実装活動と連携しつつ成果の最大化を目指す。耐災害ICT研究センターの取組の特徴として、基礎・基盤研究の実施とともに研究開発成果の最大化を図るための社会実装促進が含まれる。研究室においては主として、基礎・基盤研究を実施するが、併せて成果の社会実装にも取り組む。また、企画連携推進室においては、研究成果を活用した実証実験等の企画・実施と対外連携や地域拠点化の活動を行う。今中長期計画において、基盤領域研究室では、災害に強い光ネットワーク技術として、時間軸上での動的な波長資源制御を実現する弾力的光スイッチング基盤技術や、災害後の暫定光ネットワーク構築に必要となる基盤技術の研究開発を行う。応用領域研究室のワイヤレス通信応用プロジェクトでは、大規模災害発生時のネットワーク資源が限定される環境においてもニーズに基づく情報流通の要件(レイテンシや収容ユーザ数等)を確保するネットワーク利活用技術の研究開発に取り組む。同リアルタイム社会知解析プロジェクトにおいては、インターネット上に展開される災害に関する社会知をリアルタイムに解析し、分かりやすく整理して提供するとともに、実世界の観測情報を統合して、より確度の高い情報を提供する枠組みの確立を目指す。研究成果の最大化を目指す業務として、耐災害ICTに係る基盤研究、応用研究及びこれらの研究成果に基づく社会実装に向けた活動を連携して取り組む体制を整備する。また、耐災害ICTに係る研究開発の着実な推進及び研究拠点機能の強化に向けて、大学・研究機関等との共同研究等を通じて、外部研究機関との連携を強化する。さらに、研究開発成果の社会実装に向けて、地方公共団体を含めた産学官の幅広いネットワーク形成、耐災害ICTに係る知見・事例の収集・蓄積・交換、研究成果・技術移転等の蓄積及び地方公共団体等の利用者ニーズの把握のため、耐災害ICTに係る協議会等の産学官連携活動に積極的な貢献を行う。加えて、耐災害ICTに係る研究開発成果を活用した実証実験の実施、地方公共団体が実施する総合防災訓練等における研究開発成果の活用・展開及び災害発生時の円滑な災害医療・救護活動等に貢献するためのICTシステムの標準モデルやガイドラインの策定に関する取組等を通じて、耐災害ICTに係る研究開発成果の社会実装の促進を図る。■主な記事1 .研究室における特筆すべき研究成果(1)基盤領域研究室光ネットワークの応急復旧技術として、光ネットワークに付随する制御層ネットワークの外部接続手段に関して有線・無線冗長化を行い、分散制御による全自動修復機構を提案し、本機構を光統合テストベッド上で実装し実証実験を行った。また、光通信装置を構成する機能をそれぞれ小型パッケージ化し、「機能を選択し自由に組合せできる光通信装置」のプロトタイプを作製した。(2)応用領域研究室ワイヤレス通信応用プロジェクトにおいては、災害対応型地域通信ネットワーク技術として、広域網と地域自営網を連携し、公衆網を介して自治体内通信やイントラネットへのセキュアなアクセスを可能とする技術を実現した。災害時に迅速にネットワークを構築するための機動的ネットワーク構成技術として、移動体同士が即座に周辺デバイスを発見し、デバイス同士で直接無線通信回線を構築するための制御ソフトウェアの試作や、情報蓄積運搬プラットフォームの設計・試作を行い、スマートフォン同士で情報を送付する省電力通信システムの実証を行った。リアルタイム社会知解析プロジェクトにおいては、センサー由来の観測情報をSNS等のテキスト情報と統合的に解析する技術の実現に向け、具体的な観測情報として短時間に更新されるWebページを収集するソフトウェアを開発し、実際のデータの収集を開始した。また、ツイッターを対象として災害に関する社会知を分かりやすく可視化することが可能な災害状況要約システ耐災害ICT研究センター研究センター長  熊谷 博3.11.3