ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

106■概要災害発生時の情報通信ネットワークの機能維持、早期復旧に向けて複合的な取組の重要性が高まっている。無線や衛星などの非常手段と共に、長距離大容量の通信の根幹を担う光ファイバネットワークについても、他の通信手段との連携や、レジリエンシーを強化する基盤技術の高度化が急務である。前中長期計画で原理実証を行った広域の光ノード間の輻輳低減技術と、異種ベンダ間の相互接続による生残リソースの活用技術を発展的に拡大し、強靱な輻輳耐力を持つ弾力的光スイッチング技術及び迅速な応急復旧技術の2 本の柱に重点的に取り組んだ。■平成28年度の成果1 .弾力的光スイッチング技術災害発生時に生じた輻輳が光ファイバネットワーク全体に波及することを阻止するため、時間軸上での動的な波長資源制御を実現する弾力的光スイッチング基盤技術の研究を進めている(図1 )。平成28年度は、特定宛先へのトラヒック急増が起きた場合の輻輳緩和技術の1 つとして光パケットオフローディングを提案し、様々なネットワーク使用状態で犠牲となる光パスを最小とするアルゴリズムを構築した。具体的には、光パスサービス用の波長資源を回収し、光パケットネットワークに緊急適用する際に、削除対象となるサービス中の光パスの量を最小化する光パケットオフローディングの最適化計算手法を提案した。図2には、削除対象光パス最小化の計算結果の一例を示している。サービス状況やネットワークトポロジーに依存するものであるが、多くの場合、従来手法にない方法として光パケットトランスポンダそのものをロードバランサとして適用することで、削除対象となる光パス数を顕著に減らすことができることを確認した。また、弾力的光スイッチング機能の1 つとして、リンク障害時のバックアップ光パスを高速に設定できるよう、バーストモード光増幅器を採用した光スイッチング装置に複数波長信号を同時に制御する並列パス処理方式に基づく1 : 1 プロテクションフレームワークをプログラム実装し、物理的な光パスの設定/解放を高速化し、約9 秒で4 波長切替えを達成した。加えて、多波長の光信号を一括してモニタすることで動的な波長チャネルの等化技術を向上させている。2 .光ネットワーク応急復旧技術(1)災害時通信キャリア間相互接続技術の研究大規模災害時に通信キャリア間で生残リソースを融通し合うことで、暫定的な復旧を加速するために、相互の光ネットワーク設備を相互接続する必要がある。それぞれの事業形態や営業秘密保持に柔軟に対応可能な接続方法及び暫定網設計最適化手法を提案した。具体的には、キャリア間相互接続における評価用都市間ネットワークモデルを用いて定量評価を行い、各キャリアの網修復コストを大幅に削減可能であることを確認した(図3 )。(2)キャリア内の応急復旧技術の研究発災後に、損壊した光ファイバネットワークを迅速に復旧するためには、物理的ネットワークの完全な復旧を待たずに、通信キャリアの制御層ネットワークをいち早く復旧することが有効である。平成28年度は、光ネットワークに付随する制御層ネットワークの外部接続手段基盤領域研究室室長(兼務)  淡路 祥成3.11.3.2光ネットワークのレジリエンシー高度化技術の研究開発図1  弾力的光スイッチングと光パケットトランスポンダによるオフローディング図2  光パケットトランスポンダによるオフローディングにおける削除対象光パス数の低減効果