ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

110発する。さらに、実世界の観測情報を統合して、より確度の高い情報を提供する枠組みを確立する。加えて、これらの技術を実装したシステムを開発し、より適切な意志決定が短時間で可能となる社会の実現に貢献する。NICT外の組織とも連携し開発した技術の社会実装を目指す。平成28年度は、熊本地震への対応を通して我々が研究開発している技術の社会的アピールができた。また、災害に関する社会知をわかりやすく整理して提供するシステムとして、災害状況要約システムD-SUMM(ディーサム)の試験公開を開始した。さらに、これまで研究開発を進めてきたシステムのソフトウェア、辞書等を民間企業等にライセンス供与し、社会実装を推進することができた。■平成28年度の成果平成28年4 月に発生した熊本地震の対応において、平成27年より試験公開している対災害SNS情報分析システムDISAANA(ディサーナ)が内閣官房に設置されたツイッター分析班にて活用された。DISAANAはツイッター上の災害関連情報を分析し、平易な質問を入力することでその回答をツイッターへの投稿(ツイート)から抽出する、あるいは、エリアを指定するだけで、そこで挙がっている様々な被災報告を自動的に抽出する機能を備えたシステムである。これを用いて正確な情報を得ることが困難な指定避難所以外のニーズ等が収集され、現地災害対策本部に伝達された。この事実については、2 度の新聞報道があり、内閣官房で実際にDISAANAを活用した担当者からは、発災直後の混乱した状況では特に有効だったというコメントを得た。また、平常時は日本語ツイートの10%サンプルを用いてDISAANAを運用しているが、ツイッター社との交渉の結果、残り90%分を無償提供いただき、5 月末までという期間ではあったが、全日本語ツイートを対象としてDISAANAを運用し、全日本語ツイートを対象として運用する場合の技術検証の機会を得た。その結果、平常時の10倍となる全日本語ツイートを対象とする場合でも問題無くサービスが提供可能であることを確認した。この、全日本語ツイートを対象としたDISAANAの運用に関して報道発表を行った。これらの熊本地震の対応を通して、4 件のテレビ放映、5 件の新聞報道、12件のインターネット掲載(同一内容転載記事を除く)と多数報道され、我々の研究開発成果を大きくアピールできたと考える。センサー由来の観測情報をSNS等のテキスト情報と統合的に解析する技術の実現に向けて、具体的な観測情報として、短時間に更新されるWebページを収集するソフトウェアを開発し、これを用いて実際のデータの収集を開始した。技術の実現に向けて必要となる辞書の検討を始め、小規模な辞書を構築した。ツイッターを対象として、災害に関する社会知を分かりやすく可視化することが可能な災害状況要約システムD-SUMMの研究開発を進め、10月に試験公開を開始した。D-SUMMの開発にあたり、DISAANAで用いていた意味カテゴリ辞書(2,800万単語)である災害オントロジーの意味カテゴリを70から800ほどに細分化し、2,800万単語のうちの160万単語にこの細分化したカテゴリを付与した。この辞書と、これまでに構築してきたその他の辞書を組み合わせて、ツイッター上の被災状況を要約して示す世界初のシステムとなるD-SUMMを完成させた。また、D-SUMMにも、DISAANA同様地図表示機能を持たせたが、災害対応を実際に行う組織等との意見交換を通して、規模感がわかることが重要であるとの認識に至り、指定した意味カテゴリの被災報告の件数を地図上に表示する新しいインタフェースを実装した。これにより、地図上に表示したい意味カテゴリ、例えば、火災と道路(の被害)などを自由に組み合わせて選択でき、それらがどの辺りでどの程度報告されているかを地図上で容易に把握できるようになった(図4 参照)。D-SUMMの試験公開開始時に報道発表を行い、10件の新聞報道、1 件のテレビ放映、2 件のインターネット掲載(同一内容転載記事を除く)がなされた。我々は、研究開発した技術が社会にて広く役立つよう、研究開発技術の社会実装に取り組んでいる。DISAANA、D-SUMMについては、これらのシステムを構成するためのプログラム、辞書等の研究用ライセンスを2 つの民間企業等に供与した。我々の研究開発成果が民間企業等で活用される足がかりができたと考えている。DISAANA、D-SUMMの試験公開においては、過去の大規模な災害時におけるツイッターを対象にしたシステムとして東日本大震災試用版及び熊本地震試用版という図3 女川研究プラットフォーム画像@2017google 地図データ@2017ZENRIN勤労青少年センター地域医療センター町役場冷蔵施設東北大学女川FC取水施設水中マイクカメラ、気象センサーカメラインターネット