ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

1113  ●オープンイノベーション推進本部3.11.3 耐災害ICT研究センター2 つのバージョンも提供している。しかしながら、これらの2 つの震災において大きな被害が発生しなかった地域では、大規模な災害が起きた際にその地域ではどのような情報が流通するのかなどを体験することが困難である。また、地震以外の風水害等の災害時についても同様に身をもってシステムの振る舞いを体験することができない。我々は、これまでには、自治体等の防災訓練に際し、ボランティア等を募り、想定される被害状況下で考えられる書き込みを訓練にあわせて投稿してもらい、それをリアルタイムに分析する実証実験を実施してきた。しかしながら、このような形式の実験は、例えば50人以上の協力者を一堂に集め、投稿における注意点、システムの説明等を実施する必要があるなど大がかりであり、準備にもコストがかかる。さらに、単時間あたりに投稿できる数にも限りがあるなどの問題があった。これらの問題を踏まえ、平成28年度では形式を変更し取り組んだ。具体的には、防災訓練等において、想定される被害状況等に基づいた書き込みを事前に用意し、それぞれの書き込みに想定される書き込みの時間を付与しておき、防災訓練の経過にあわせて自動的に書き込まれる仕組みを導入した。この方法により、短時間に大量の投稿を投入するなど、より実際のSNSに近い形式で訓練を実施できるようになった。平成28年度東京都図上訓練において、この方式によりDISAANA、D-SUMMの活用を実施した。その概要は、首都直下地震が発生するという想定状況に従い、4,000件の書き込みを人手で、3,000件の書き込みを自動生成により事前に準備し、これらの書き込みをSNSを模した掲示板に、訓練時の経過時間にあわせて自動投稿する。投稿された書き込みはリアルタイムに解析され、DISAANA、D-SUMMを通して災害状況を把握するという形式で実施した(図5 )。訓練におけるこれらのシステムの活用は好評であり、東京都の職員からは、「災害時におけるSNS情報を集約することの重要性を認識できた。今後は、自治体職員がこのようなシステムを使いこなせるようにならなければならない」というコメントを得た。図4 D-SUMMによる地図表示機能の実行例図5  平成28年度東京都図上訓練におけるDISAANA、D-SUMMの活用概要