ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

114■概要機構内外と連携して、テラヘルツ波を利用した100Gbps級の無線通信システムの実現を目指したデバイス技術や集積化技術、計測基盤技術等の研究開発を行う。また、テラヘルツ帯等の超高周波領域における通信等に必要不可欠である信号源や検出器等に関する基盤技術の研究開発を行う。これらの研究開発成果を基に、テラヘルツ帯における無線通信技術及びセンシング技術の実用化を目指した標準化活動の推進に貢献する。平成28年度は、テラヘルツ無線テストベッドや、テラヘルツスペクトラム計測のための基盤技術を重点課題として研究開発を推進し、研究開発成果を最大化するための業務として、ITU-RやIEEE802等のテラヘルツ国際標準化活動を推進した。■平成28年度の成果1 .テラヘルツ無線テストベッド基盤技術100 Gbps級のテラヘルツ通信技術実現のため、最先端光ファイバ通信技術を援用したファイバ無線技術によるテラヘルツ波信号発生技術の検証を行っている。超大容量テラヘルツ通信の実現にあたり、利用可能帯域が広いテラヘルツ帯といえども周波数利用効率の高い変復調方式(例えば4 値位相遷移変調や16値直交振幅変調など)の適用が肝要であるものの、一般的にテラヘルツ帯において信号源の有する位相雑音の影響により位相情報を用いる変復調方式の実現は難しい。加えて将来テラヘルツ無線の評価を行うテストベッド環境においては、発生されるテラヘルツ信号の周波数の拡大及びその可変性も重要である。平成28年度は、周波数範囲の拡大と低位相雑音信号の実現を目指した光周波数コム信号の発生とそのテラヘルツ帯位相雑音計測手法の検討を行った。図1 に、構築した周回型周波数シフト方式周波数コム発生技術の概要を示す。駆動周波数が可変である光変調技術をベースとした周波数シフタを用い、かつ、周回ファイバループ内に装荷した周期的光バンドパスフィルタを用いることにより、1.8 THz帯に最適化したヘテロダイン型周波数成分解析機による単側波帯位相雑音スペクトルの評価を行ったところ、10 kHz周波数オフセット時におよそ-60 dBc/Hzの値が得られた。本信号発生技術を用いることにより、高精度な多値変復調のテラヘルツ帯通信への適用が可能になると考えられる。2 .テラヘルツスペクトラム計測基盤技術スペクトラム計測においては、電波法の定めるスプリアス特性を計測可能とするため、オクターブ(0.3-0.6THz)の超広帯域とする。この帯域を1 台の計測装置で担いながら、これまでにない高速、高精度で、スペクトラム計測を可能にする基盤技術の確立を目指している。これを実現する方法の1 つとして、計測周波数帯域をいくつかの帯域に等分割するフィルタバンクを用いてマルチバンド化し、周波数コムを局部発振波とすることで、分割した周波数帯のそれぞれを同時に計測することを提案した。平成28年度は、マルチバンド用フィルタバンクの設計、試作、評価を行った。フィルタバンクの特性として、反射損失及び通過損失が低く、信号損失を抑えるためにチャネル間の周波数ギャップができるだけ小さいこと、そして、チャネルの独立性が高いことが挙げられる。90度ハイブリッドカプラとバンドパスフィルタをそれぞれ2 つずつ用いた導波管型ハイブリッドカップル型フィルタバンクを採用し、405-480 GHzを25 GHz間隔で3 つの周波数帯に分割する導波管型フィルタバンクを設計した。すなわち、Ch. 1:455-480GHz、Ch. 2:430-455 GHz、Ch. 3:405-430 GHzである。導波管サイズとしてはWR2.2(280 μm×560テラヘルツ連携研究室室長  鵜澤 佳徳 ほか3名3.11.4.1テラヘルツ帯の有効利用による快適な社会の実現図1 周回型周波数シフト方式周波数コム発生技術の概要