ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

116■概要本研究センターは、各種の社会システムの最適化・効率化を実現するため、センサー等のIoT機器から得られたデータを横断的・統合的に分析することによって、高度な状況認識や行動支援を可能にする技術を研究開発する。具体的には、ゲリラ豪雨や環境変化等、社会生活に密接に関連する実空間情報を適切に収集分析し、社会生活に有効な情報として利活用することを目的としたデータ収集・解析技術の研究開発を行う。また、高度化された環境データを様々なソーシャルデータと横断的に統合し相関分析することで、交通等の具体的社会システムへの影響や関連をモデルケースとして分析できるようにするデータマイニング技術の研究開発を行う。さらに、これらの分析結果を実空間で活用する仕組として、センサーやデバイスへのフィードバックを行う手法、及びそれに有効なセンサー技術の在り方に関する研究開発を行う。これらのNICTの研究開発成果を健康・医療・介護・防災・減災等の分野における利用ニース?等に結ひ?付け、オープンイノベーションによる社会実証実験等を実施する。■主な記事1 . 異分野データ連携による高度な状況認識や行動支援技術の開発リモートセンシングデータや交通データ、SNSデータ等分野や種類の異なるIoTデータの相関分析に基づいて、環境問題対策における高度な状況認識や行動支援を可能にする異分野データ連携基盤技術の研究開発を行い、ゲリラ豪雨や大気汚染の対策支援に応用した。ゲリラ豪雨対策支援システムは吹田市と神戸市に設置されたフェーズドアレイ気象レーダーとハザードマップを連携させ、50 mm/h以上の豪雨が予測される地域をリアルタイムに表示する機能を開発し、神戸市で実証実験を行った。得られた知見に基づいて更なる改良を図り、平成29年度においても実証実験を継続する。また、マルチスケールな大気汚染データ同化・予測技術においては、StretchNICAM-Chemに基づくシミュレーション予測方式の基本設計を行うとともに、福岡大学に設置されているライダーを用いたエアロゾル光学特性に基づく分類アルゴリズムの基本設計を行った。さらに、これらの成果をスマートIoT推進フォーラム異分野データ連携プロジェクトの技術報告書にまとめ公開した。2 . ソーシャルビッグデータのリアルタイム蓄積・解析基盤の開発社会で生み出される大規模なソーシャルビッグデータをリアルタイムに蓄積し、解析するための大規模グラフデータ解析技術、データから周期的パターンを発見するマイニング技術、ソーシャルメディア影響分析技術、大規模情報統合可視化技術を研究開発した。グラフマイニング技術は現在のクラウド環境に適したスケーラブルな分散グラフデータベースエンジンを開発し、通信コストを12%削減する処理方法を開発した。また、稀少なアイテムの出現を考慮した高精度かつ高速な周期的頻出パターンマイニング技術を開発した。ソーシャルメディアの情報は、他のユーザの行動に影響を与えることに着目し、人々の購買行為に影響を与えた投稿を分析することで、高精度に影響力の高い投稿情報を発見する手法を開発した。このようなソーシャルビッグデータの分析結果を人が的確に把握できるようにするために、実空間で日々発生するイベントの影響や時空間的な広がりを理解可能にする3 次元可視化手法を開発した。さらに、ゲリラ豪雨時の災害や事故発生時の状況可視化を実現するための物理センサーデータとの連携可視化基盤を開発した。3 .IoT無線技術を活用したICT利活用システムの実証NICTが中心となって開発したIoT無線技術であるWi-SUN技術を活用して、“データの地産地消”をコンセプトとした社会実証システムの研究開発を行った。具体的には、認知症による高齢者の徘徊情報を地域内で共有して街ぐるみで見守り等を実現させる“ながら見守りサービス”や、見通しの悪い交差点などでの子どもの“飛び出し注意喚起サービス”、企業向けにはタクシーの“乗客発見支援サービス”を実現させるためにサービスアプリケーションを開発するとともに、IoT無線ルーターの自動販売機への搭載技術、タクシーなどの事業用IoT無線ルーター搭載技術の研究開発を行った。さらに、平成29年度に企業と共同で実施する東京都墨田区における実証実験の設計を行った。統合ビッグデータ研究センター 研究センター長(兼務)  木俵 豊3.11.5