ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

120■概要当研究室は、平成26年度に始動したソーシャルICT推進研究センターのビジョンを引き継ぎ、社会課題の解決に資するICT利活用システム及びサービスの実証的な研究開発を、異分野融合・異業種連携の視点から実践する研究室である。多岐にわたるICT利活用システムのなかでも、今後、国内外で大きな市場の成長が期待されるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)分野での実証的な研究開発に注力している。NICTが広く産業界と連携して取り組むべき社会課題のひとつに、日本が課題先進国と言われるがゆえの『超高齢化社会』の課題がある。当研究室では、特に本課題に関連した“ながら見守り”や“交通安全”のほか、日本国が世界に先行して取り組み、将来的な大きな輸出産業になり得る、新たなICT利活用システムとサービスの実証的な研究開発を、国内企業や大学機関とも協同しながら実践し、早期事業化につなげるための活動を推進している。IoT技術の利活用については、我々の環境を取り巻く無数の生活器具が備えるとされるセンサーのデータを収集する無線利活用技術と、収集データの処理・分析技術が研究要素としては重要であるが、これら技術を活用したIoTサービスやアプリケーションを広く社会に浸透させるためには、戦略的な基盤整備に関わる構想が必要である。当研究室では、1 .“データの地産地消”サービス・アプリケーションの開発、2 .自動販売機へのIoT無線ルータ搭載、3 .事業用車両へのIoT無線ルータ搭載、の3 つの地域IoT基盤を社会に浸透させる戦略に基づいた研究開発と実証実験の実践を推進している(図1 )。■平成28年度の成果平成28年度の当研究室の活動としては、「“データの地産地消”で地域の安心安全を見守る」(図2 )をコンセプトに、地域の局所的に発生した“スモール”なデータであっても、これをできるだけ安く簡単な仕組みで、地域内で消費・活用する安心安全サービスの実証的な研究開発を推進するために、諸機関との協同体制の構築と実証実験のための各種プロトタイプ開発・構築を実施した。一般的なビッグデータ利活用モデルでは、データを収集・分析して、その結果に基づいたサービス提供を行うが、よりシンプルな地域データの利活用モデルとして、①地域内で「発生」した情報を、②地域で「共有」して、③地域の人々の「行動」を促す、もしくは支援するといった循環を基本としたサービスの検討を実施した(図2 )。より具体的な利活用サービスのイメージとしては、認知症による行方不明高齢者等の徘徊場所情報を地域内で共有することで、街ぐるみで高齢者の見守りや迅速な捜索を可能にする“ながら見守りサービス”や、時々刻々と変化する地域内交差点付近に現れる飛出し危険性の高い子供等の存在を車両にリアルタイムに報せる“飛出し注意喚起サービス”、またWi-Fiスポットの利用状況から潜在的なタクシーの乗客を検出して、近隣を走行する車両向けに発信する“乗客発見支援サービス”の検討と実証用アプリケーションの開発を実施した。IoTサービスを社会に浸透させるための第一の地域IoTソーシャルイノベーション推進研究室室長  荘司 洋三 ほか3名3.11.5.2“データの地産地消”で安心安全な街づくり?地域IoT基盤の構築?図2 “データの地産地消”で地域の安心安全を見守る街・地域情報を共有情報が発生情報で行動見守り交通安全防犯 環境観光空き家図1 地域IoT基盤を社会に浸透させる3つの戦略