ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

1213  ●オープンイノベーション推進本部3.11.5 統合ビッグデータ研究センター基盤構築戦略として、各種無線IoTセンサーからのデータを収集するIoT無線ルータを高密度に地域内に設置するための時間やコストの課題に対処するため、国内に約200万台普及しているとされる飲料自動販売機へのIoT無線ルータ搭載を普及戦略とした。特に都市部では飲料自動販売機が数百メートル間隔で遍在しており、マルチホップ通信によるサービスエリア拡張が容易なIoT向け無線通信規格Wi-SUNの通信距離と、この自動販売機の設置間隔とがほぼ同等であることに着目して、大手飲料メーカーであるアサヒ飲料(株)の協力を得ながら、Wi-SUNを活用した地域IoT基盤の構築とアプリケーション開発、墨田区をフィールドに想定した実証実験のための計画策定を実施した。図3 は同飲料メーカーが実際に墨田区の屋外に設置中の飲料自動販売機70台の拠点を活用して、メッシュネットワークを設計した場合の構成事例及び実際に当研究室が開発したIoT無線ルータを設置済みの自動販売機の写真である。自動販売機の設置間隔が300 m以下であれば相互に通信が可能として設計を試みた結果であり、実際には遮へい物等の環境によって電波が届かない区間が想定されるが、およそ1 メッシュネットワークのみで墨田区面積比にして45%以上のIoTサービスエリアを構成できる見通しを得た。IoTサービスを社会に浸透させるための第二の地域IoT基盤構築戦略として、自動販売機の活用と併せて、タクシーやバス、宅配車両など地域性の高い移動を伴う事業車両へのIoT無線ルータ搭載を、低コストに地域IoT基盤を社会に浸透させる戦略と位置づけた。これら車両は、必ず人の“生活がある場所”を中心とした活動領域を行き来するため、その場所が電波の届きにくい環境や郊外にあっても、高い頻度で数百メートル以内の無線IoTセンサーの設置場所まで接近し、必要なセンサー情報の受け渡しを行うことが可能になる。このような仕組みを活用すれば、車両を保有する様々な地域の事業者が、おのずと街の安心・安全を“ながら見守り”」する基盤として社会貢献することが可能になる。平成28年度は、車両への搭載を想定したスマートフォン型のモバイルIoT無線ルータの開発を行い、まずはアサヒ飲料(株)の協力による飲料補充車両への試験搭載を実施すると同時に、東京無線協会(東京無線タクシー)に属する本所タクシー(株)(所在地:墨田区横側)の協力を得て、同社が保有するタクシーへの試験搭載も搭載して平成29年度以降に実施予定の実証実験に備えた(図4 )。図3 自動販売機を拠点としたメッシュネットワークの設計例図4 飲料補充車両とタクシーにモバイルIoT無線ルータを実装アンテナスマホ型IoT無線ルータ(グローブBOX内)IoT無線ルータ