ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

51序説1.2 組織及び業務分野データ相関分析・予測の基本方式を開発し、ゲリラ豪雨と交通データへの適用を通じて、運転リスクの予測に基づく地図ナビゲーションシステムを開発した。さらに、全球大気化学輸送モデルに基づく大気汚染データの同化・予測の基本方式を開発し、アジア圏~福岡市周辺の大気汚染予測を実現した。④「脳情報通信技術」では、情動・認知に関する脳内表現の解析を目的とし、被験者別の脳活動から知覚情報の解読や認知内容の文書化に成功した。この技術は、コマーシャル(CM)の動画評価に応用され、商用サービスに活用された。蓄積した脳計測データの脳活動とうつ傾向との相関から、将来のうつ傾向を予測できるプロトタイプシステムを確立した。脳機能計測技術として、ノイズ低減手法によるSN比の改善や低歪みの脳機能画像の取得、また、撮像パラメータの調整や抽出アルゴリズムの改変により神経伝達物質の定量化に成功した。軽量小型脳波計の開発では、静止時と同等レベルの歩行時の脳活動計測に成功した。(4)サイバーセキュリティ分野①「サイバーセキュリティ技術」では、より安全なサイバーネットワークの利用を目指して、セキュリティオペレーション技術の高度化研究を行っており、サイバー攻撃統合分析プラットフォーム(NIRVANA改)の機能強化を行った。さらに、サイバー攻撃の可視化に基づく観測網の拡充と能動的なサイバー攻撃観測技術の検討のため、悪意のあるソフトウェアの評価・攻撃観測・対策技術の研究を実施した。さらに、研究技術検証の実施と研究成果の速やかな普及のために、NIRVANA改の官公庁等への導入を進めた。また、異常な通信を検知する対サイバー攻撃アラートシステム(DAEDALUS)への参加地方自治体数が600件を突破するなど、より広範囲なアラート情報提供の枠組みを実現した。②「セキュリティ検証プラットフォーム構築活用技術」では、標的型攻撃の詳細な手法を把握するため、受信した不正な添付ファイル等を企業サイズの模擬環境で実行し、具体的な攻撃手段を観測・分析可能な世界初のサイバー攻撃誘引基盤(STARDUST)を開発し標的型攻撃の長期誘引性能を実証する試験的な運用を開始した。STARDUSTにおいて攻撃者を誘引する企業サイズのネットワークを自動構築する模擬環境構築技術をベースに、機構のセキュリティ人材育成事業(CYDER:CYberDefense Exercise with Recurrence)、文科省の実践セキュリティ人材育成コース(enPiT-Security:SecCap)、堅牢化技術競技(Hardening)それぞれの演習・競技用模擬ネットワーク環境を提供し、セキュリティ人材育成にも貢献した。③「暗号技術」では、IoTの展開やパーソナルデータの幅広い利活用等の、新たな社会ニーズに対応する機能を備えた暗号技術について検討した。解読の難易度が高く、かつプライバシー保護機能も併せ持つ「格子暗号」について、これまでよりも正確な安全性評価手法を提案した。暗号化したまま演算処理が行える「準同型暗号」の演算を制御する方式を提案した。パーソナルデータの利活用に向けたプライバシー保護技術の検討及び産官学連携体制の確立のため、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(CREST)にAIを活用したプライバシー保護データ解析技術研究の産学官連携プロジェクトを提案して採択され、AI研究の3 省(総務省、文部科学省、経済産業省)連携研究の枠組みの立ち上げに貢献した。(5)フロンティア研究分野①「量子情報通信技術」では、光や電子の量子力学的性質を利用した究極的に安全な通信技術の実現を目指して、量子鍵配送(QKD)と現代セキュリティ技術(秘密分散ストレージ)の融合技術を世界で初めて実証した。また、QKDの乱数生成技術・認証技術を応用し、ドローン制御通信の完全秘匿化技術を開発した。これは社会的課題であるドローン運用時の安全性確保に大きく貢献するものである。また、光子と超伝導量子回路中の人工原子が極めて強く結合した深強結合現象を世界で初めて観測することに成功した。②「新規ICTデバイス技術」では、革新的デバイス技術開発により、生活や社会インフラに変革をもたらすことを目指して、酸化ガリウムデバイスとして世界初の耐圧1 kV超えを実現した。これは需要の高まっているパワーデバイス分野に革新をもたらすものである。また、深紫外LEDの高出力化要素技術を開発し、世界最高出力となる光出力150 mWを達成した。これはデバイスの環境性能の革新に大きく貢献する。③「フロンティアICT領域技術」では、ICT分野で扱う情報の質や量を既存の枠組みを超えて拡張し、新しい情報通信パラダイムを創出することを目指して、世界最高のガラス転移温度205℃の超高耐熱電気光学(EO)ポリマーの開発に成功した。また、PLL(Phase LockedLoop)発振回路において、集積化の妨げとなる水晶発振器に替わり、高集積化可能な圧電振動子を利用する画期的な構成を開発した。また、自然界にある分子モジュールからの新規分子素子の創製に成功した。(6)研究成果を最大化する業務①「技術実証及び社会実証を可能とするテストベッド