ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

16■概要ICTを利活用して人類の新たな価値を創造するためには、我々を取り巻く環境から様々な現象や状況を観測・測定してデータ化し、情報に置き換えていく必要がある。当研究所のミッションは、電磁波を用いてこの機能を実現することである。「電磁波の特性を活かしたより正確な計測を実現することにより、社会を守り生活を守るとともに、これまで見えなかったことを見ることにより科学の新たな価値の創造を導く」ことを目標に掲げ、NICT内はもちろん、産業界やアカデミアとの連携を構築することにより、電磁波の新たな応用分野の開拓も進める。今中長期計画では、電磁波を利用して人類を取り巻く様々な対象から様々な情報を取得・収集・可視化する技術である「リモートセンシング技術」や「宇宙環境計測技術」、社会経済活動の基盤となる高品質な時刻・周波数を発生・供給・利活用するための基盤技術である「時空標準技術」、様々な機器・システムの電磁両立性(EMC)を確保するための基盤技術である「電磁環境技術」について研究開発を実施する。平成28年度の実施体制として、リモートセンシング研究室、宇宙環境研究室、時空標準研究室、電磁環境研究室、電磁波応用総合研究室の5 つの研究室を設置した。■主な記事電磁波研究所のおける平成28年度の主なトピックスを以下に示す。なお、1 .の詳細については、それぞれの研究室の報告において記す。1 .各研究室における活動の概要(1)リモートセンシング研究室① 大阪、神戸、沖縄にてフェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)の実験運用を行っており、本年度はPAWRの観測データが社会で活用されるための実証実験に力を入れた。特に、理化学研究所等と連携してスーパーコンピュータ「京」を用いたシミュレーションにより、ゲリラ豪雨の詳細な再現に成功した。また、神戸市と連携してPAWRの観測データを同市の豪雨対策活動につなげる実証実験を統合ビッグデータ研究センターと共同で実施した。② 地上デジタル放送の電波を利用した水蒸気量の推定技術を完成させ、当該技術により求めた結果と地上での計測結果との間で極めて良い一致を見た。当該技術は報道等で大きく取り上げられた。③ 熊本地震における被害状況を把握するため、航空機搭載合成開口レーダー(Pi-SAR2)による緊急観測を行った。本震発生の翌日( 4 月17日)に観測を行い、速報として作成した撮影画像は総務省や内閣府防災担当、熊本県、大分県に提供した。またフル解像度の画像は防災科学技術研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所に提供し、土砂崩れの解析に活用された。また、NICTのWebサイトでも公開した。(2)宇宙環境研究室① 情報通信研究機構法(以下、機構法)第14条第1項第4 号に定められている「電波の伝わり方の観測、予報・異常に関する警報の送信等」の業務を着実に行うために、国内4 カ所の電波観測施設及び南極においてイオノゾンデによる電離層観測を24時間365日実施し、宇宙天気予報を毎日発出した。予報を掲載したNICTのWebサイトには毎月約16万件のアクセスがあり、毎日約1 万人の登録者にメールで予報を伝えた。② 太陽フレアの大きさを予測するためにAIを活用する研究開発を完成させ、人間による判断と比較してAIの活用によりスコア値を大きく向上させることに成功した。当該技術は報道等で大きく取り上げられた。(3)時空標準研究室① 機構法第14条第1 項第3 号に定められている「周波数標準値の設定、標準電波の発射、標準時の通報」の業務を着実に行い、標準電波の発射では稼働時間率99.9%を達成し、NTPサービスでは1 日あたり最大約20億のアクセスがあった。また、1 月1 日に「うるう秒」の挿入を無事に完了した。② ストロンチウム(Sr)光格子時計の周波数絶対値の再現性を向上させ、将来の秒の再定義において定義値を決定するための有効な手法を考案した。また、世界で初めてSr光格子時計を使った原子時系を半年間にわたって連続して生成した。③ 無線を用いた双方向時刻比較技術である「ワイワイ」技術の開発を開始し、無線通信を用いてピコ秒精度電磁波研究所研究所長  平 和昌3.1