ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

20■概要当研究室では、主に太陽を起源とする放射線や高エネルギー粒子、磁気圏及び電離圏の擾乱などの宇宙天気現象を監視し、現況や予測の情報を毎日提供するとともに、その精度向上を目的とした研究開発を行っている。電波伝搬に大きな影響を与える電離圏等の擾乱の状態をより正確に把握する宇宙環境計測及び高精度予測のための基盤技術の研究開発を行うとともに、航空機の運用等での電波インフラの安定利用に貢献するシステムの構築に向けた研究開発を行い、研究開発成果を電波の伝わり方の観測等の業務に反映する。また、人工衛星の安定運用に不可欠な宇宙環境の把握・予測に貢献するため、太陽風データを利用可能とする高性能磁気圏シミュレータの研究開発を進めるとともに、衛星観測データによる放射線帯予測モデルの高精度化技術の研究開発を行う。さらに、太陽電波観測・太陽風シミュレーションによる高精度早期警報システムの実現に向けて、太陽風の擾乱の到来を予測するために必要な太陽活動モニタリングのための電波観測システム及び衛星観測データを活用した太陽風伝搬モデルに関する技術の研究開発を行う。さらに、今後必ず発生すると考えられる激甚宇宙災害への対策として、通信・放送・測位及び電力網や人工衛星の運用などが極端現象により、どこにどの程度の影響を受ける可能性があり、その結果として社会システムの損失・損害がどの程度になる可能性があるのかを具体的・定量的に把握するための調査・研究を進めている。現在、国際民間航空機関(ICAO)において宇宙天気情報を民間航空運用に用いるための改定案を検討している。この例をはじめ、宇宙天気情報が実社会で利用される状況が進んでおり、宇宙災害の社会影響の定量的な把握とリアルタイムモニタリング、及び精度の高い予測情報の提供を行うことが求められているといえる。■平成28年度の成果1 .電離圏擾乱の研究開発国内の電離圏定常観測として整備してきた新電離圏観測装置VIPIR2の検証と運用を開始、O-Xモード分離されたイオノグラム作成に成功し提供を始めるとともに、電離圏パラメータの自動抽出に着手した。また、国内外GPS受信機網及び赤道越え電波伝搬を利用し電離圏観測のリアルタイム化・広域化を促進した。電離圏シミュレーションにおいては、全球大気圏?電離圏モデル(GAIA)をベースとしたデータ同化のプロトタイプシステムを構築、数値予測の基盤技術の研究開発を進めた。アジア-オセアニア域の詳細電離圏情報を生成するため、全球モデルと領域電離圏モデルの連携に着手するとともに、プラズマバブルモデルの高精度化を宇宙環境研究室室長  石井 守 ほか16名3.1.2太陽活動から電波利用を守る図1  大気電離圏モデルの性能改良:全球モデルの高分解能化と磁気圏接続部の改良、領域電離圏モデルの高精度化