ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

213観る●センシング基盤分野3.1 電磁波研究所実現し、従来の2 倍以上の解像度を実現した。また、GAIAについては従来の約3 倍の解像度への高分解能化、磁場形状や磁気圏との接続部分の改良による精緻化を実施した(図1 )。さらに、人工知能(AI)を用いた電離圏擾乱予測モデルの改良による予測的中率向上や、電波伝搬シミュレータの詳細検討及び実装着手など、ニーズ指向の分かりやすい情報配信の推進に向けた研究開発を進めた。2 .磁気圏擾乱の研究開発観測・モデル開発ともに衛星軌道近傍の宇宙天気予報精度向上に向けた活動を進めた。テーラーメイド宇宙天気システム開発を進め、3 機の衛星データから静止軌道全域の粒子分布を推定・可視化するプロトタイプシステムを完成した。観測との比較による磁気圏シミュレーションの精度評価のために、宇宙環境変動と衛星帯電イベントの個別事例の解析・評価を行った(図2 )。磁気嵐時の衛星への影響を見積もるため、磁気圏グローバル電磁流体力学(MHD)シミュレーションと内部磁気圏モデルとの結合を検討した。さらに、磁気圏擾乱情報の共有のために、ひまわり8 号の観測データを用いた宇宙環境データベースを公開するとともに予測モデルを開発した。3 .太陽の研究開発太陽・太陽風観測においては、観測・モデル開発ともに太陽現象の早期把握に向けた研究活動を進めた。昭和27年から続けてきた平磯太陽観測施設での電波観測を終了し、機能を山川へ移転、地方拠点の集約化に貢献した。また、長年蓄積されてきた平磯の太陽電波観測データのコミュニティー標準フォーマットへの変換を完了した。さらに平磯・山川太陽電波観測データ公開用ウェブインターフェースを開発し、データ公開への道筋をつけた。山川電波観測施設の観測精度向上のためのチューニングを完了した。太陽・太陽風シミュレーションにおいては、AIによる太陽フレア予測モデルを開発し、性能評価を実施、世界トップクラスの成績を達成(True Skill Score:TSS~0.5→0.9)、メディアに多数取り上げられた(図3 )。また、地上観測による太陽磁場データを用いた太陽風予測シミュレーションコードの並列化を行い、定期的に実行できる環境を整備した。4 .その他の活動南極電離層定業観測においては、昭和32年国際地球観測年(IGY)以来電離層定常観測を継続するとともに、標準電波の長基線観測を行い長波電波伝搬モデルとして国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)の寄与文書に投稿、勧告改訂に至った。国際活動については、宇宙天気予報に関する国際機関の検討に積極的に参加し、活動に貢献した。ICAOの宇宙天気利用の検討会合である気象パネル等に出席し、寄与文書2 件提出するなど検討に貢献した。科学研究費補助金の新学術領域「太陽地球圏環境予測」(PSTEP)の枠組み等を活用し、宇宙天気予報情報の実利用のための検討を産学官で活性化する取り組みを行った。宇宙天気ユーザー協議会を開催、航空・通信・測位について関係する関連省庁、航空会社、大学研究者などの利用者とともにニーズ・シーズマッチングの検討を行いハザードマップ作成に必要な情報収集を行った。また宇宙天気現象の中でも経済的インパクトが大きい電力及び航空についてハザードマップの作成を進めた。図2  ひまわり8号宇宙環境データベースの公開、静止軌道粒子分布の可視化ひまわり8「GOES13、15号(NOAA(アメリカ海洋大気庁)ホームページより)」「ひまわり8号(気象庁ホームページより)」「ひまわり8号(気象庁ホームページより)」GOES13GOES15図3  AIによる太陽フレア予測モデルを開発、世界トップレベルの成績を達成(TSS~0.9)