ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

22■概要正確な時刻と周波数は、情報通信システムの維持・発展を支えるとともに、精密物理計測の基盤となっている。時空標準研究室では、標準時及び周波数標準の更なる高精度化、高信頼化を目指して、日本標準時やそこから得られる標準周波数の実利用技術の開発、次世代周波数標準の開発及びその評価や展開に不可欠な比較・伝送技術の開発を行う。平成28年度は中長期計画の1 年目であり、日本標準時の分散管理システム構築、In+イオントラップ光時計の開発、Sr光格子時計の高精度化及び時系応用、衛星双方向搬送波技術及びVLBI技術を用いた高精度周波数比較技術の開発を進め、また周波数標準の利活用技術として、無線双方向技術及びチップスケール原子時計の開発を新たに開始した。■平成28年度の成果1 .標準時及び周波数標準の発生と供給に関する業務日本標準時の発生では、定常業務を安定に継続するとともに、1 月1 日にうるう秒調整を着実に行った(図1 )。日曜の元旦の実施となったが、当日の説明会及び見学には400名超が訪れたほか、9 社の取材対応を行った。また標準時分散化システムの構築では、信頼性向上のための試験を行い、また神戸副局のみでも安定した合成原子時が生成可能であることを確認した。日本標準時の供給に関しては、テレホンJJYで月間14万アクセスを超える状況が続くとともに、公開NTPサービスのアクセス数は平成28年9 月には1 日あたり20億に到達した。標準電波においては、前年度完了した設備更新以降、新設備での運用を安定に継続した。国際活動においては、原子時計データを継続して提供し世界の標準時構築に貢献するとともに、度量衡の国際委員会(CCTF)でWGチェア等の委員活動を実施したほか、アジア太平洋地域でも国際比較調整などで活動を牽引し、ITU-Rに日本代表として参加した。2 .次世代周波数標準器の研究開発光周波数標準の開発では、ストロンチウム(Sr)光格子時計において、真空槽内電荷の除去などによりSr系の不確かさを従来比2/3に低減(5.7×10-17)し、さらに、国際原子時を利用して不確かさ4.3×10-16で絶対周波数を評価した。ここで開発した手法は特定のCs(セシウム)原子泉に依存しないため、将来の秒の再定義において定義値を決定するのに貢献することが期待される。また、光格子時計を間欠的に運用し、その周波数を基準として水素メーザー信号の周波数のオフセット及びドリフトを予測し、それを打ち消す周波数調整を連続的に入れることによってリアルタイム連続原子時系を構築することに成功、結果確度・安定度ともに16乗台の信号を半年間にわたって生成し続けることに成功した(図2 )。In+イオントラップ光時計では、光源やイオンに照射する光学系の改良等を通じて、安定した時計遷移の励起が可能となり、先行研究の不確かさを1 桁以上上回る時空標準研究室室長  花土 ゆう子 ほか31名3.1.3高精度な周波数と時刻を生成・維持し、社会に供給する技術の開発図1 うるう秒挿入の瞬間(NICT本館の時計表示) 図2 Sr光格子時計による時系実信号の生成