ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

233観る●センシング基盤分野3.1 電磁波研究所15乗台の不確かさで絶対周波数を測定することに成功した。当該時計遷移の遷移周波数については2 つの先行研究の間で13乗台での周波数不一致があったが、本測定によってどちらがより真値に近いか一定の結論を得ることができ、本測定結果は国際度量衡委員会が決定しているIn+時計の推奨周波数を大きく変えることになることが予測されている。テラヘルツ周波数標準技術においては、1 ~ 3 THz帯を網羅する広帯域THzカウンターを設計し、その動作実証に向けた開発に着手した。THz帯と光領域を位相同期したままリンクさせ、これを利用した新たなTHz基準周波数伝送システムにおいて精度18桁で位相コヒーレントに長距離伝送(20 km)できることを実証した。また酸素分子O2+イオンを用いた確度17桁が達成可能な中赤外周波数標準を理論提案し、論文発表した。3 .高精度な時刻・周波数比較・伝送技術の研究開発衛星双方向周波数比較-搬送波位相方式(TWSTFT-CP)に関して、韓国標準機関KRISSとの間での実験を12月に開始した。TWSTFT-CPの結果をGPSのPPP(Precise PointPositioning/精密単独測位)解析及びInteger PPP(整数値バイアス固定方式PPP)解析による結果と各々比較した。特に、TWSTFT-CPとIPPPとの比較では、10-16を切る安定度及び周波数差で一致する成果を得た(図3 )。さらに、Sr格子時計(NICT)とYb格子時計(KRISS)との間での直接周波数比測定が実現した。また、今年度よりコード位相及び搬送波位相の双方を測定可能な新モデムの開発を開始した。欧州宇宙機関(ESA)が主導する科学衛星プロジェクトACES参加準備に関しては、日本代表機関として運用する予定の地上局設置時期がESAから平成30年初頭と提示され、国際宇宙ステーション(ISS)への実験機器打ち上げが同年夏頃とされたことを踏まえ、免許取得等、実験に向けての準備を進めている。VLBI(超長基線電波干渉法)を用いた周波数比較では、高速サンプラを使ってRF信号を周波数変換なしに取得する方法により、安定した精密遅延計測が可能となった。観測精度を上げるため、小型アンテナの主鏡と受信システムを(口径1.6 m一次焦点から2.4 mカセグレン型へ)改善し、観測の感度を4 倍以上向上させた。更に小型アンテナ2 基と大型アンテナ1 基を使った広帯域VLBI観測の精度評価実験を産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ)との間で繰り返し実施し、2 m級小型アンテナ間でも遅延計測精度が、1 ピコ秒以下の精度となることを実証した。これは、従来の大型アンテナを使ったVLBI観測でも実現できなかった世界最高の精度である。また、超小型VLBI局を使った周波数比較性能がGPS PPP解析と同等以上であることを確認した(図4 )。4 .高精度な時刻・周波数の利活用技術の研究開発本年度より無線双方向時刻比較(ワイワイ)技術の開発を開始し、通信無線を利用した時刻同期及び距離変動計測をソフトウェア無線機を利用して実証した。また、同時に本技術に対応した半導体チップ及びモジュール基板の製作に成功し、手軽に利用できる技術へと進めることができた。また、MEMS及びIoT技術の発達に呼応してチップスケール原子時計の研究開発を開始し、デスクトップサイズの原子時計を構築して時計動作を実現するとともに、コンパクトな量子部の開発に向けてMEMSセルの試作を行い、原子遷移による吸収を確認した。図3  平成29年1月19日より13日間にわたって実施したNICT-韓国KRISSでのTWSTFT-CP実験の結果1E-171E-161E-151E-141E-131E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6(TWSTFT-CP)(PPP)(Integer PPP)(PPP)-(TWSTFT-CP)(Integer PPP)-(TWSTFT-CP)修正アラン分散平均化時間 [秒]図4  UTC(NMIJ)-UTC(NICT)の比較をVLBI観測及びGPS観測それぞれの方法で測定した結果