ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

24■概要電波利用の多様化に対し安心・安全な電波環境を構築するため、EMC(電磁両立性:機器やシステムが互いに電磁的悪影響を受けず・与えずに動作する能力)の研究開発を行っている。第4 期中長期計画の初年度である平成28年度は、中長期計画の各課題について下記の目標を設定し研究開発を行った。1 .先端EMC計測技術家庭用電気機器等から電源線に流出する広帯域伝導妨害波の測定系を構成し、周波数特性及び測定感度の評価と改良を行うとともに、実環境を模した電磁干渉評価法の基礎的検討を行う。またワイヤレス電力伝送(WirelessPower Transfer:無線電力伝送)等の普及によって重要となる、周波数30 MHz以下の放射妨害波に対する測定場の条件と評価法を検討する。周波数300 GHzまで使用可能な電力計較正装置の構築に着手する。広帯域スプリアス測定場における電波環境とその季節変動を計測することにより、不要電波の特性を調査し、対策法を検討する。2 .生体EMC技術テラヘルツ帯まで人体の電波ばく露評価技術を開発するために、電気定数測定手法に関する検討、低周波数帯電気定数測定システム改良、ミリ波帯における数値シミュレーション手法、テラヘルツ帯における分光計測手法と相互作用シミュレーション手法等について検討する。最新・次世代電波利用システムの適合性評価技術を開発するために、LTE(Long Term Evolution)システムの適合性評価の不確かさ評価、WPT(Wireless PowerTransfer:無線電力伝送)システムのための結合係数評価と接触電流評価手法の改良、5 Gや WiGig*(WirelessGigabit)システム等のミリ波帯携帯無線端末からのばく露評価量等についての検討を行う。さらに、SAR(Specific Absorption Rate:比吸収率)較正業務の詳細手順の明確化とその妥当性評価・検証を行う。3 .研究連携と国内外技術基準への寄与大学・研究機関等との共同研究実施や協力研究員の受け入れ等により、電磁環境技術に関する国内の中核的研究機関としての役割を果たすとともに、研究開発で得た知見や経験を、ITU、IEC等の国際標準化活動や国内外技術基準の策定等に寄与する。■平成28年度の成果1 .先端EMC計測技術の研究開発周波数1 GHzまでの広帯域伝導妨害波を測定可能な測定系について、重要要素技術である供試体・電源線接続部を開発し、隣接ポート間結合を20 dB程度低減するとともに平坦な周波数特性を実現した(図1 )。医療機器等に対する無線機器等の接近を模した電磁耐性試験に適した、均一電磁波照射が可能な広帯域アンテナの基礎検討を行い、数値解析により実現可能性を確認した(特許出願1 件)。また、周波数30 MHz以下の放射妨害波に対する測定場の条件と評価法及び測定に用いるループアンテナの較正法について研究開発を進め、CISPR国際標準化会議に寄与し、同会議における議論を主導した。超高周波帯の電力測定技術に関し、220~330 GHzにおける電力標準器(カロリーメーター)を産業技術総合研究所(産総研)と世界で初めて共同開発するとともに、市販の電力計を較正するための較正システムを構築した。また、レーダーアンテナの遠方界測定(測定レンジ400 m)が可能な広帯域スプリアス測定場候補地につい電磁環境研究室 室長  松本 泰 ほか18名3.1.4IoT時代を支える電波環境の構築を目指した研究開発と業務図1  広帯域伝導妨害波測定装置の特性改善(隣接ポート間結合の大幅低減と平坦化)-60-50-40-30-20-1000 200 400 600 800 1000隣接ポートとの結合[dB]周波数[MHz]開発装置従来型* WiGigはWi-Fi Allianceの登録商標