ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

26■概要電磁波応用総合研究室は、社会インフラや文化財の効率的な維持管理等への貢献を目指して、電磁波を用いた非破壊・非接触の診断が可能となる技術やフィールド試験用装置に関する研究開発を行い、観測データの解析技術及び可視化技術の研究開発を行うことを目的としている。また電磁波を応用した技術に関する萌芽的な研究も推進している。「非破壊センシング」と「センシングデータビジュアルインターフェース(SVI)」の2 つプロジェクトから構成され、併せて電磁波研究所のアウトリーチに関連する活動も行っている。「非破壊センシングプロジェクト」では、マイクロ波から赤外線までの電磁波を用いて、目では見えない物体の内部構造を観測する技術を開発している。周波数が低い(波長の長い)マイクロ波は、物体の内部に深く伝搬できるため、コンクリート建造物内部の鉄筋分布等の調査に広く用いられている。NICTではマイクロ波の中でも周波数の高い、5 GHz及び20 GHzを利用して木造建造物やコンクリートの表面付近の調査を進めている。ミリ波、THz(テラヘルツ)波と周波数が高くなるにつれて、分解能は高くなるが、物体内部への伝搬距離が短くなる。NICTでは約10年前より、世界に先駆けてTHz波によるイメージング技術を絵画等文化財の非破壊調査に応用し、現在ではヨーロッパを中心に広く用いられている。一方、赤外線は熱で検出する手法のため、内部の層構造は得られないが、鋼管内部等、電磁波が全反射されてしまう金属製の物体内部の調査も可能である。一方、「センシングデータビジュアルインターフェース(SVI)プロジェクト」では、ホログラフィの研究開発を実施している。ホログラフィは光の情報を“波面”として正確に記録・再生する技術であり、ホログラフィによって製作されたメディアをホログラムと呼ぶ。ホログラムは、特定の波長にのみ作用する、フィルム状であるため軽いといった特徴を有するため光学素子(HolographicOptical Element:HOE)として活用されており、例えばヘッドマウントディスプレイ内部の光学素子として使われている。また、両眼視差や運動視差・輻輳・調節といった奥行きを知覚するすべての手がかり(生理的要因)を再現できるため、立体画像表示などにも使われている。このようにホログラフィは既に社会で使われているが、「所望の光を実現するホログラムを作るには、まずはその所望の光を別手段で作ってホログラム記録材料に記録する」という記録工程が必要であり、この記録工程が必ずしも容易ではないという課題がある。例えば、複雑な光を実現するHOEのためにはその光を別手段で作る必要がある、などである。NICTでは上記の課題に対して、電子ホログラフィを活用してホログラム記録材料に印刷する技術を研究している。この技術での記録装置は、「電子ホログラフィで作り出した数mm×数mm程度のサイズの光を記録する」という工程をホログラム記録材料の位置を変えながら順次記録する(印刷する)装置であるため、ホログラムプリンタと呼んでいる。電子ホログラフィなので、ホログラムデータを計算することで複雑な光の状態や立体表示を実現できるという特徴がある。当然、実現する光に応じて装置を組み替えるという必要もない。また、記録工程(印刷工程)で製作したホログラムを原版として複数品を作る複製技術や、様々な用途に応用する技術も合わせて研究しており、これらを総称してホログラムプリント技術(Hologram PrintingTechnology:HOPTEC)と呼んでいる。技術の概要を図1 に示す。■平成28年度の成果1 .非破壊センシング技術汎用の地中レーダーは2 GHz帯以下の周波数を用いて電磁波応用総合研究室室長(兼務)  平 和昌 ほか8名3.1.5電磁波応用の可能性を広げる研究開発と社会展開図1  ホログラムプリント技術(Hologram Printing Technology:HOPTEC)複製光のふるまいを計算ホログラムデータ印刷原版プロジェクタと組み合わせた動画表示特殊な光学素子として利用