ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

32■概要当研究室では、5 G及びそれ以降において予想される通信トラヒックの増加に対応するための超大容量マルチコアネットワークシステム技術や、急激なトラヒック変動や通信サービスの多様化への柔軟な対応を可能とする光統合ネットワーク技術及び光アクセスから光コアまでをシームレスにつなぐ光アクセス・光コア融合ネットワーク技術に関する研究開発を行っている。以下に具体的な取り組み内容を述べる。1 .超大容量マルチコアネットワークシステム技術1 入力端子当たり1 ペタbps級の交換ノードを有する超大容量マルチコアネットワークシステムに関する基盤技術、光信号のまま交換可能とするマルチコア/マルチモードオール光スイッチング技術の研究開発を行う。加えて、更なる大容量化の実現に向けた空間スーパーモード伝送基盤技術の研究開発を行う。2 .光統合ネットワーク技術共通ハードウェアの再構成や共用化により、異なる通信速度・通信方式・データプロトコル処理を提供する光スイッチトランスポートノード基盤技術、1 テラbps級多信号処理を可能とする光送受信及び光スイッチングシステム技術、時間軸・波長軸に対するダイナミックな制御を瞬時に行う技術の研究開発を行う。3 .光アクセス・光コア融合ネットワーク技術超高速・極低消費電力の光アクセスネットワークに係る基礎技術として、光アクセスネットワーク延伸化及び多分岐化技術や、空間分割多重光アクセスネットワーク技術に関する研究開発を行う■平成28年度の成果1 .超大容量マルチコアネットワークシステム技術これまでマルチコアファイバ伝送の研究は、世界的に盛んに行われ、NICTも世界記録となる大容量伝送を実現してきた。しかし、マルチコアファイバの特性を活かした交換装置の研究は進んでおらず、交換装置に接続するマルチコアファイバのコア数分のスイッチ素子や空間多重信号分離素子が必要なため、コア数によって装置の構成を変更しなければならない等の問題があった。その問題を解決するために、当研究室では、マルチコアオール光スイッチング技術として、空間多重信号分離素子を使用せずに1 個のスイッチング素子で多種多様なマルチコアファイバに対応可能な空間多重用ファイバ一括光スイッチを提案し、世界最高コア数である7 コア一括光スイッチを開発した(図1 )。世界に先駆けて空間スーパーモード伝送基盤技術に取り組み、光ファイバ中の光信号パワーの増大によって生じる非線形光学効果がマルチコアファイバ内のコア間クロストークに与える影響を世界で初めて実験的に明らかにし、現象のモデル化に成功した。本成果は、マルチコアファイバを用いた波長多重スーパーモード伝送システムの設計に重要な指針を与えた。海外研究機関との連携により、空間多重方式向けクロスコネクトを用いたネットワークアーキテクチャを提案し、従来の波長多重方式ネットワークと比較し光資源を7 倍以上に有効活用する波長フィルタ無し伝送やコア間分離による安全性確保などを検証し、著名な国際会議ECOC(European Conference and Exhibition on OpticalCommunication)2016にて発表し、報道発表も行った。フォトニックネットワークシステム研究室室長事務取扱  和田 尚也 ほか18名3.2.1大容量かつ柔軟な光ネットワークを実現する新技術の開拓図1 空間多重用ファイバ一括スイッチの構造入力1レンズ回転板(スイッチング素子1個)7コアファイバ入力2出力2出力1