ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

353繋ぐ●統合ICT基盤分野3.2 ネットワークシステム研究所(2)ネットワーク構築制御自動化技術地理的に分散配置された多数のIoTデバイスからのデータを低遅延で処理するIoTエッジコンピューティング環境を対象とした研究に着手した。本研究では、インフラ層とプラットフォーム層の2 階層のアーキテクチャを考案した。図1 に、ひとつのインフラ上で動作する複数のプラットフォームがあり、個々のサービス(ライブ配信、交通案内等)がユーザに提供される例を示す。このように、ひとつのインフラ上で複数のサービスが実行できるようにすることで、インフラ提供者は効率的に資源活用ができ、サービス提供者は自前の設備がなくてもユーザへサービスすることができるようになる。インフラ層については、独自のインターフェース構造を設計した。200基地局を想定したシミュレーションによる基礎評価を行い、サービス側が要求する低遅延処理やインフラ側に求められる省電力性を損ねることなく、階層間の制御メッセージ量を従来手法に比べ1/100に削減する効果を得られる可能性を確認した。プラットフォーム層においては、本環境において膨大数のデータフローに対しフローごとに処理資源を割り当てる分散フロー処理プラットフォームを設計した。基礎評価を行い、1,000個のセンサーが毎秒10,000個のデータを生成するデータフロー処理で、100ミリ秒内の高速で資源割り当ての動的変更ができることを確認した。さらに、多様なサービスそれぞれの品質要求を満たすネットワークを提供するため、インフラが提供する資源を動的に変更する認知型調停機構の自動化の研究を実施し、急激な環境変動が起きても人工知能的な技術を適用した資源マイグレーションによってサービス品質を向上させる手法を設計した。また、ネットワーク・サーバ挙動の監視・複合イベント処理(分析)・割付・調整を繰返しサービスに必要な資源量を見積る自動資源調整方法の設計と設定自動化(図1 )の設計に着手し、サーバへの負荷に応じてサーバ増減等のネットワーク構成変更をできることをエミュレーションで確認した。(3) 情報・コンテンツ指向型ネットワーク技術(ICN/CCN:Information/Content Centric Networking)本来、人間が欲しているのはサーバへのアクセスではなく、コンテンツ(もしくは情報)の取得であるという考えに基づき、「コンテンツを取得するためにサーバのIPアドレスを調べてそのサーバにアクセスし、そこからコンテンツ取得する」という従来の通信プロトコルの無駄を排除し、「コンテンツそのものの識別子を指定してコンテンツ要求を行い、自分の近くにあるネットワーク機器やPCからコンテンツを取得する」ことを可能とする「情報・コンテンツ指向型ネットワーク技術」の研究を実施している。この技術は、ネットワークを効率的に利用し、結果として、応答性能が高く、品質が良い通信を実現する。当研究室では、3.2ネットワークシステム研究所項に記したように、コンテンツ名を用いた通信を実現する経路制御及びトランスポート技術の研究として、高品位ストリーミングを目的とするCCNベースのL4C2(Low-LossLow-Latency Streaming using In-Network Coding andCaching)の基本設計及びシミュレーション評価を行った。L4C2はマルチキャスト、ネットワーク内キャッシュとコーディング、データの部分再送、マルチパスを主な構成要素とする(図2 )。L4C2ではビデオデータを複数のデータに分割し、①マルチキャスト機能によってデータを複数の経路で分配、②通信途中のデータ損失を受信側で再生成できるように、ネットワークコーディング機能によって冗長データを生成し、ネットワーク内キャッシュに保管、③データ欠損を検知した場合にはキャッシュされたデータを再送、④これらのデータを複数の経図1 複数のサービスが動作するインフラにおける認知型調停機構の自動資源調整イメージ①観測リンク(帯域)NWノードエッジサーバ制御ソフトウェア状況にあわせて資源分配ライブ配信天気予報交通案内メール、SNS例)スポーツ会場に人が集まるライブ配信開始・・・・②分析③調整④割付IoT① ネットワーク・サーバ利用を監視② 複合イベント処理等で事象を特定③ 強化学習等で性能を満たすよう調整④ 設定を変更インフラ層プラットフォーム層(サービスを実装)