ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

40■概要第4 期中長期計画において、2020年以降に事業化が予想される次世代陸上移動通信システム(5 G)等にみられる、極めて多様化した地上系無線システム要求を満たすために、高スループット、高モビリティ、低遅延、大容量、多数接続、省電力等の高度化要素をヘテロジニアスに具現化し、物理層にとどまらない複数制御層にわたる包括的な制御を前提とし、各技術要素を適切に選択、統合した全体システム構築に必要となる周波数有効利用技術の研究開発に取り組んでいる。本研究開発においては、多様化したシステム要求に応じたシステム構築を実現するために、1 .インフラ高度化による高機能アクセスを検討するワイヤレスネットワーク制御・管理技術、2 .端末高度化による端末網形態多様化を検討するワイヤレスネットワーク適応化技術、3 .無線通信の信頼性向上・適用環境拡張を検討するワイヤレスネットワーク高信頼化技術、の3 つのサブプロジェクトの概念を導入し、それぞれ検討を進めている。■平成28年度の成果平成28年度は、上述した3 つのサブプロジェクトにおいて、それぞれ次のような成果を上げた。1 .ワイヤレスネットワーク制御・管理技術としては、5 Gにおける低遅延や多数接続等の要件を満たしつつ、マイクロセルを中心とした柔軟なセル展開が可能となる、従来のLTEシステムと親和性の高い無線アクセス技術とネットワーク制御技術を検討した。具体的には、従来のセルラシステムを運用してきた従来事業者に加えて、プライベート(管理)空間に特化しマイクロセルを設置・運用するマイクロセル事業者を想定し、異種事業者間におけるユーザ情報の交換・共有によるサービスの拡大のためのアーキテクチャ、リソース共用技術に関する技術検討を行った(図1 (a))。また、多数無線端末の同時接続を想定し、制御等に不可欠の低遅延通信を可能とする多数接続・低遅延アクセス制御技術について、円滑な社会実装の見地から既存LTEの変更によるシステム設計を行い、基本評価装置による性能評価を行った。さらに、ミリ波帯やテラヘルツ波帯等の周波数帯の電波利用を推進するため、電波伝搬モデル構築のための実験を実施し(図1 (b))、周波数を高度に共用する技術を開発した。加えて、マイクロセルを適用する管理空間における様々な利用シナリオ(自動運転、鉄道ブロードバンド、オフィスIoT等)の要求性能を満たす評価環境を各分野の企業・通信事業者等と連携し開発して、実証実験要領の検討を推進した。得られた成果について、効果的な社会展開を考慮した上で、ITU-R、3GPP、IEEE802、IETF等の標準化に提案した。2 .ワイヤレスネットワーク適応化技術としては、ビル内等大規模エリアにおいて、多数の無線端末による大規模メッシュの構築に必要な自律型メッシュ構築機ワイヤレスシステム研究室室長  児島 史秀 ほか26名3.3.1地上系無線のシステム構築を志向した周波数有効利用技術の研究開発図1 ワイヤレスネットワーク制御・管理技術(a)管理空間制御の概念、(b)オフィス環境テラヘルツ波伝搬実験