ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

42■概要当研究室では、地上から宇宙に至るまでを統合的にとらえ、平時はもとより災害時における通信ネットワークを確保するため、2 つの大きな研究開発の柱である光と電波により、高速化・大容量化を実現し、広域利用を可能とする衛星通信技術に関する研究開発を推進している。光通信では、衛星通信の大容量化への期待の高まりや周波数資源逼迫の解決にこたえるため、10 Gbps級の地上-衛星間光データ伝送を可能とする衛星搭載機器の研究開発を行うとともに、通信品質向上等の研究開発を実施している。また、海外の宇宙機関等とのグローバルな国際連携を行い、世界に先行した宇宙実証を目指すことで国際的優位性を確保しつつ、グローバル光衛星通信ネットワークの実現に向けた基盤技術を確立することを目指している。電波の無線通信では、ユーザーリンクにおける通信容量としてユーザー当たり100 Mbps(メガビット/秒)級の次期技術試験衛星のためのKa帯大容量衛星通信システムを実現するため、非常時の地上系通信ネットワークの輻輳・途絶地域及び海洋・宇宙空間に対して柔軟・機動的にブロードバンド通信を提供する地球局技術や広域・高速通信システム技術の研究開発を進めている。以下に、グローバル光衛星通信ネットワーク基盤技術と海洋・宇宙ブロードバンド衛星通信ネットワーク基盤技術の各プロジェクトについて平成28年度の成果を述べる。■平成28年度の成果1 .グローバル光衛星通信ネットワーク基盤技術(1)光衛星通信については、50 kg級超小型衛星で世界初となる衛星搭載小型光通信機器(小型光トランスポンダ:SOTA)を用いた低軌道衛星-地上間光通信実験において、2 年以上の運用期間にわたって光通信実験を成功裏に遂行し、世界初の波長1.5μm帯の偏光測定(図1 )を行うなどエクストラサクセスを達成した。また、欧米の宇宙機関とSOTAを用いた国際共同実験を実施し(図2 )、平成28年2 月には関係機関を招集し「超小型衛星搭載光通信実験ワークショップ(SOTAワークショップ)」を開催し、実験成果を取りまとめた。(2)次期技術試験衛星での宇宙実証をターゲットとして、静止衛星と地上との間で10 Gbps級の伝送速度を実現する超高速光通信機器の開発を開始した。本機器に採用し衛星搭載を前提として、超高速光衛星通信デバイスの開発を委託研究の形で開始し、キーとなるデバイスの放射線試験等耐環境試験や光通信特性を実施し11.1 Gbpsで理論限界付近の受信感度を確認した。光衛星通信地上局に関しては、大気ゆらぎの影響を緩和するため、衛星通信に特化した補償光学システムの検討と、大気ゆらぎの時間変化を測定するシステムの構築に着手した。(3)豪州SERCとの共同研究の一環として、大型のスペースデブリにレーザーを照射した際に散乱される光を検出するためのシステムを整備した。光学観測による軌道決定については、民間企業からの受託研究として、静止衛星の光学観測~軌道決定を効率的に行うための手法の開発を進めた。(4)国際標準化については、NICTがエディタになっている宇宙データシステム諮問委員会(CCSDS)におけるリアルタイム気象と大気特性データに関するグリーンブック(技術解説書)CCSDS 140.1-G-1の完成に寄与し、宇宙通信研究室室長  豊嶋 守生 ほか20名3.3.2光と電波による超高速・大容量で柔軟な次世代衛星通信技術を目指して 図2 SOTAを用いた国際共同実験の実施図1 SOTAを用いた世界初の波長1.5μm帯の偏光測定実験