ブックタイトル情報通信研究機構年報

ページ
58/318

このページは 情報通信研究機構年報 の電子ブックに掲載されている58ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

情報通信研究機構年報

50■概要当研究室では、これまでユニバーサルコミュニケーション研究所で研究開発をしてきた音声処理分野、画像表示分野、ビッグデータ解析分野に加えて新たに画像処理分野の研究開発を開始することを目的に、第4 期中長期計画から研究プロジェクトを立ち上げた。特にインターネット上でアクセス可能な膨大な画像データ(画像ビッグデータ)に着目し、これらの画像の中に写っている状況と意味を理解するコーパス型の画像状況意味解析技術や可視化装置技術の研究開発を開始し、将来的に、社会知解析技術や多言語音声対話技術、IoT情報分析技術と連携して多方面の情報分析を可能とする技術の実現を目指す。具体的には以下の研究開発を行う。1 . 大量の画像・映像データを収集し、スクリーニング・ラベリング・アノテーション・インデクシングなどを自律的に行う技術基盤を整備、画像状況コーパスを構築する。2 . 画像状況を記述して意味空間上に表現する研究を行い、意味空間上での画像探索技術を開発する。3 . 画像状況コーパスを機械学習することで画像からの6W抽出を行う画像状況意味解析技術を開発する。4 . 画像ビッグデータの効果的な可視化のために360度方向から立体視できる可視化装置を開発する。これらの技術に基づき、具体的なシステムとして、観光支援システムからDISAANA、D-SUMMといった災害対策支援システムまで幅広く社会システムに実装し、画像情報の利活用を進める。■平成28年度の成果新たに画像処理分野の研究開発を開始するためには、大量の画像データを収集して大規模な画像状況コーパスを構築する必要がある。また、その画像状況コーパスも利用目的を考慮して対象となる分野の画像データから構築しなければならない。これまでは独自にこれらのデータを収集することは非常に困難であったが、現在では、インターネット上でアクセス可能な画像のオープンデータが存在しており、研究開発に利用できるデータも多くある。これらのオープンデータの利活用が期待される分野は幅広いが、平成28年度は、特に観光支援と災害対策支援を念頭に置いて、画像状況コーパスの構築技術の研究と、画像状況を記述する技術の研究開発を行った。まず、画像状況コーパスの構築技術の研究として、SNS投稿に含まれるいわゆる画像ビッグデータを用い、画像コーパス構築の第1 段階としてデータベースやアノテーションツールを構築した(図1 )。SNS画像ビッグデータから、既存の画像認識技術を用いて災害関連イベントを抽出する実験を行い、災害対策支援システムに望まれる画像解析の基本要件を整理した。具体的には、災害時にSNSに投稿される画像データのうち数千枚程度の代表的な画像を題材として取り上げ、従来手法などを適用することで課題分析をしながら、望ましい技術の方向性について検討を重ねた。この結果、学習データの絶対的に不十分なケースに対する機械学習及び周辺技術の重要性などが明らかとなった。一方、観光支援用の画像コーパス構築に向け、SNSから収集した大量の観光地画像を、建造物等の被写体ごとに分類する手法(画像クラスタリング)を開発した(図2 )。本手法は、以下のような手順からなる。1 .各画像間の局所特徴点を照合2 . 画像を頂点、局所特徴点が合致した画像間を辺で結んだマッチグラフを構築(図3 )3 . マッチグラフにコミュニティ検出手法と呼ばれる辺の密度に注目したグラフクタスタリング技術を適用情報利活用基盤総合研究室室長(兼務)  木俵 豊 ほか7名3.4.2画像ソーシャルデータを解析する情報利活用基盤技術図1 画像コーパス作成ツール