ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

513創る●データ利活用基盤分野3.4 ユニバーサルコミュニケーション研究所これにより、高精度な画像分類が実現したが、従来のコミュニティ検出手法には小さなクラスタ(要素数の少ない画像グループ)を検出できないという欠点があった。これを解消するため、ランダムウォーク技術を用いた新規のコミュニティ検出手法を開発した。東大寺、日光東照宮、法隆寺に関連した画像をSNSから収集し、開発手法を検証したところ、実際に従来のコミュニティ検出手法より、小さなクラスタを多く検出できることが確認できた。これらの成果を論文にまとめ、IEEE InternationalConference on Image Processing(ICIP)2017に投稿した。さらに、画像ビッグデータから取得した画像から、目的に応じて必要な情報だけを取り出し、不要な情報を画像から消去するための技術についても検討を開始した。ここでは、災害時にSNSに投稿される画像を平常時の画像と比較することで被災状況を評価することを想定し、障害物による影響の少ない平常時の画像をDB(データベース)として構成するための基本方式について検討した。具体的には、繁華街等の街並みを写した画像から、歩行者や車両などの移動体が写りこんでいないクリアな街並み画像のDBを構成するための画像収集方法と、画像解析技術による移動体消去方式について検討を行った。街並み画像としては、インターネット上でアクセス可能な画像のオープンデータを活用するとともに、特定の限られた地域の街並み画像は360°カメラを用いて収集するなど、画像収集方法についても検討した。移動体消去については、異なる地点から撮影された複数枚の画像を用いて、移動体が写りこんでいない画像を合成する方式を開発した。また、画像状況記述に関する研究としては、大規模な内容を可視化して多人数で確認するためにテーブル型のメガネなし3DディスプレイfVisiOn(図4 )の研究を行い、データの確認容易性について検討した。まず、収集した画像データ等を容易にfVisiOn上で3D映像再生できるようにするための環境を構築し、実機上で動作実験を行った。また、フルカラーでのアニメーション表現がしやすいというfVisiOnの特徴を活かすために、あらかじめ準備された3D形状データから、3D映像をリアルタイムで再生するアルゴリズムを開発し、データをその場で確認しながら、直観的かつ対話的に3Dコンテンツの制作が可能な環境を構築した。試作したシステムと製作したコンテンツは、トップカンファレンスを含む国内外の学会・展示会にて動態展示を行い、いずれも千人を超える規模の体験者を集めた。また、試作したシステムの詳細について国際ジャーナルOptics Expressに発表し、米国メディアSPIE News Roomでも紹介されたほか、経済産業省Innovative Technologies2016、画像電子学会 画像電子技術賞などを受賞した。図2 画像クラスタリング大仏大仏殿多聞天像雑多な画像観光画像DB図3 マッチグラフ誤合致誤合致図4 fVisiOn立体型ディスプレイ