ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

553創る●データ利活用基盤分野3.5 脳情報通信融合研究センター2 .ヒューマンアシスト研究課題個々人の運動能力・感覚能力、さらには社会的な活動能力を推定・向上させる技術開発の一環として、ブレインマシンインタフェースや社会的活動能力向上に関する基盤的研究を実施するとともに、リアルタイム視覚情報変換フィードバックによる動作変容システムの試作を開始した。またこれに関連して、筋肉のボリューム(大きさ・形状)と干渉(ぶつかり合い)による変形を考慮した新しい仮想人体筋骨格モデル(図2 )を開発した。これにより、従来モデルでは表現しきれなかった肩・体幹などの複雑な筋肉の位置関係及び筋力の作用ベクトルを表現できるようになり、運動神経科学やリハビリ、スポーツ等における運動解析の精度向上に寄与するものと期待される。3 .脳情報に基づく評価基盤研究課題各種製品やサービス等の脳情報に基づく評価基盤の開発の一環として、前年度までに引き続いて、動画を見ているときの被験者の脳活動データを基にエンコード及びデコードのモデル(図3 )を構築し、CM動画等の各種製品やサービスの印象評価システムに応用する研究を更に進めるとともに、感じることと行うことの非独立性に関する研究を行った。人は目や耳等の感覚器を介して外界から情報を受け取ると、それらを脳内で処理することによって外界の認識や判断・評価を実現している。このことから、視覚や聴覚などの外部からの刺激とそれに対応した脳活動データを蓄積することで、様々な刺激とそれに伴う人の認知や印象内容がどのような脳活動となって現れるか(外部からの刺激を脳活動にエンコードする)をモデル化することができる。このモデルを逆に利用すれば、脳活動から認知内容を推定する(デコード)ことも可能となる。この外部からの刺激と脳活動とのエンコード/デコード(図3 )モデルを構築するために、脳活動データと外部からの刺激をデータベースとして蓄積するとともに、テレビCM等を視聴中の脳活動からそれら刺激に対する印象等を解読する基盤技術を構築し、企業への同技術のライセンス供与を介した社会実装を図っている。また、「どのようなものを見ているのか」という知覚判断は、見た内容だけでなく、見た内容に伴う運動行為にかかる負荷を反映していることを実験的に証明した。これまで、外部から脳への入力処理である知覚判断と、脳から外部への出力処理である運動行為はそれぞれ独立したものであり、運動行為は単に知覚判断の結果を反映するだけと考えられてきた。しかし、今回の実験により、両者は実は密接に関連しており、外界に働きかける運動行為が、実は我々が外界をどのように認識するのかの知覚にも役立てられていることが明らかになった(図4 )。図2 開発した筋骨格モデル図3 外部からの視覚刺激と脳活動とのエンコード/デコードモデル体験知覚脳活動エンコードデコード図4 実験状況と結果(手にかかる負荷によって点の方向判断も影響を受けることが明らかになった)