ブックタイトル情報通信研究機構年報

ページ
66/318

このページは 情報通信研究機構年報 の電子ブックに掲載されている66ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

情報通信研究機構年報

58■概要先進的音声翻訳研究開発推進センター(ASTREC)は、世界の「言葉の壁」をなくしグローバルで自由な交流を実現することを目標としたグローバルコミュニケーション(GC)計画*1に基づく、多言語音声処理技術と多言語翻訳技術を研究開発している。ASTREC内には先進的音声技術研究室、先進的翻訳技術研究室、統合システム開発室、企画室が設置され、NICTの職員のみならず民間企業等から研究者、技術者等の専門スタッフが参画してオールジャパン体制で研究開発とGC計画を推進している。これらの研究開発体制により、ICTを活用したオープンイノベーションを加速させ、多言語音声翻訳技術等を用いた「言葉の壁」がない先進的なICT社会の実現を目指す。平成28年度は前年度に引き続き、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」で来日する外国人観光客に言葉の壁を意識させない「おもてなし」を実現するために、多言語音声翻訳技術の精度向上と対応言語数及び対応分野の拡大を行い、民間企業と連携して各分野における実証実験を行った。上記の研究開発の具体的な内容は、本年報中、3.6.1先進的音声技術研究室、3.6.2先進的翻訳技術研究室、3.6.3統合システム開発室の項を参照いただきたい。■主な記事1 . 多言語音声翻訳アプリ“VoiceTra(ボイストラ)*2”の進化VoiceTraの改善及び辞書登録について、平成28年度の取組を図1 に示す。例えば、ブラジルポルトガル語については、音声認識・音声合成機能を追加し、翻訳精度を向上させ、その機能を実装した。東京都と共に、リオデジャネイロに開設された「Tokyo2020ジャパンハウス」の展示会場にて来訪者とのコミュニケーションにVoiceTraを活用し、有効性の確認と課題の洗い出しを行った(図2 )。雑音環境下での精度劣化等の課題もあったが、混雑時にブラジルポルトガル語ができないスタッフの補助として有効な面が確認できた。2 .産学官連携による共同実証実験グローバルコミュニケーション開発推進協議会*3では、GC計画の推進に資するため、NICTを中心に産学官の力を結集し、多言語音声翻訳技術の精度を高めるとともに、その成果を様々なアプリケーションに適用して社会展開の計画を策定している。この協議会の会員を中心に、様々な共同実証実験を進めており、研究開発へのフィードバックも積極的に行っている。平成28年度は協議会会員等28組織から辞書・コーパスの提供を受け、VoiceTraの辞書に反映した。総務省委託「グローバルコミュニケーション計画の推進-多言語音声翻訳技術の研究開発及び社会実証-Ⅰ.多言語音声翻訳技術の研究開発」の委託先を含む14団体で設立したコンソーシアム(代表:パナソニック)では、防災、鉄道、ショッピング、タクシー、医療等の分野を対象に、多言語音声翻訳技術の実用化に向けた研究開発や社会実証、利活用モデルの検討と試行についての活動を推進している。例えば、鳥取市の観光タクシーで先進的音声翻訳研究開発推進センター研究開発推進センター長(兼務)  木俵 豊3.6* 1   http://www.soumu.go.jp/main_content/ 000285578.pdf* 2   VoiceTraはNICTの登録商標です。* 3  http://gcp.nict.go.jp/図1 VoiceTraの進化(平成28年度)図2 リオジャパンハウスでのVoiceTraの活用