ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

853拓く●フロンティア研究分野3.8 未来ICT研究所を可能とする電極メサ構造を開発した。また本技術を基盤として、電流密度を低減するために発光領域の大面積化に取り組んだ。その結果、発光アクティブ領域を大幅に拡大し(0.1→0.35 mm2)、かつ均一な注入電流拡散と発光分布を得ることが可能なデバイス構造を開発した。また、発光領域を増加させたことに伴い、光取出し効率を向上させるAlN基板上のナノ光取出し構造を、従来よりもはるかに大面積に作製することが必要となる。これまでの研究において我々は、独自のAlNナノ光取出し構造を開発し、AlN基板上深紫外LEDに対して、高い光取出し効率を達成しているが、そのような構造を従来の電子ビーム(EB)リソグラフィーではなく、独自に開発したナノインプリントプロセス技術を用いて作製した。深紫外LEDの社会普及を目指すには、高出力化への取組とともに、低コスト化への検討も必須である。本ナノインプリント技術を用いることで、高コスト化し易いナノ構造を駆使した光出力の向上技術でありながら、従来のEB等の加工法を用いる場合と比較すると、圧倒的な製造時のコスト低減が可能となる。これらの要素技術を統合しLEDチップ全面に光取出し特性と放熱特性を同時に向上させる独自のナノ光・ナノフィン構造を形成したAlN基板上深紫外LEDを試作し(図1 )、その特性を評価した。外部量子効率の結果(図2 )において、従来型素子では、注入電流の増加に伴い、急速に低下してしまう現象(ドループ)が見られたが、今回新たに開発したナノ光・ナノフィン構造を形成した深紫外LEDでは、注入電流の増加(最大850 mAまで)に対し、効率がほとんど低下せず、ドループ現象の明確な抑制に成功した。同時にスペクトル解析により、高注入電流時でのLEDのジャンクション温度の上昇が従来構造に対し抑制されていることを明らかにしている。また、深紫外LEDの発光ニアフィールド(近視野)像(図3 )において、従来型素子では、電極メサ構造(アクティブ領域)の形状とほぼ同一の放射パターンが観測された一方、今回新たに開発したナノ構造付加型素子では、LEDチップ全体の広い領域からの光放射を観測した。これは開発素子において、光取出し角が大幅に拡大していることを示すものである。この結果、光出力特性(図4 )において、従来構造に対し、約20倍(@850 mA)もの大幅な出力向上に成功し、シングルチップ、発光波長265 nm、室温・連続駆動下の深紫外LEDにおいて、深紫外波長帯世界最高出力となる光出力150 mW超を達成した。図1  マウントへのフリップチップ接合後の深紫外LEDの外観ナノ構造付加型LED チップ 電極AlN サブマウント図2  深紫外LEDの注入電流に対する外部量子効率図3  深紫外LEDのニアフィールド光出力パターン(a)従来品(フラット表面)及び(b)開発品(ナノ光・ナノフィン構造付)の比較(a) 従来品(フラット表面) (b) 開発品(ナノ構造付加型)図4  深紫外LEDの注入電流に対する光出力とエンハンスメント