ブックタイトル情報通信研究機構年報

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概要

情報通信研究機構年報

86■概要全ての人やモノがネットワークにつながるIoT(Internet of Things)技術によりスマートな社会構造を創生する、好きな時・好きな場所で大容量のコンテンツを自由に活用する、画像やセンサなどの多種多様な情報源を基に安心安全に生活する、多様なコミュニケーションによりQoL(Quality of Life)の高い人生をおくる―これら高度情報化に裏打ちされた豊かな社会を実現するためには、情報通信技術(Information and CommunicationsTechnology:ICT)の更なる高度化と革新が不可欠である。その実現には、高度・高機能なシステム設計やソフトウェア技術はもちろんのこと、同時に、それを物理的に形作るためのコアとなるハードウェアを創生すること、そしてそれらを実現可能とする革新的なデバイス技術が必要となる。 その一方、中・長期的な視点に立脚した先導的かつチャレンジングなデバイス研究に対する企業側の取り組みは近年滞りがちであり、基盤的な技術開発力の将来への不安感が高まりつつある。このような社会的背景の中、図1 に示すような産業界や学術界と強くコラボレーションを図りつつ、デバイス基盤技術の研究開発を推進するオープンイノベーション拠点として「先端ICTデバイスラボ」が発足し、最先端のデバイス基盤技術研究に活用されている。この先端ICTデバイスラボでは、革新的な光デバイス技術やミリ波/THz波等の高周波デバイス技術、光・高周波融合技術、ナノ加工技術に基づく非線形光学材料や超伝導材料などの新機能創生とそのデバイス応用等の「基盤」に関する研究開発が実施されている。その研究成果は、将来の情報通信システムへの応用だけでなく、学術や産業などの広い分野への貢献も目指している。将来の情報通信システム実現の鍵となる革新的なハードウェア技術の構築に挑戦するため、「先端ICTデバイスラボ」では施設や設備の高度化、維持管理や運営方法等の効率化を図りつつ、NICT内外の研究者に広くオープン化された研究拠点として運営されている。平成28年度の先端ICTデバイスラボのNICT内部・外部含めた年間の利用者総数は延べ人数4,500人に及び、デバイス技術研究の活性化に大きく貢献している。■主な記事1 . オープンイノベーション拠点としての先端ICTデバイスラボ急速に発展、高度化するICT技術への要求にこたえるため、光や超高周波等のあらゆる周波数帯を融合して活用できる革新的な情報通信デバイス要素技術を創造するべく、デバイスの設計・試作・実装・評価等の高度ハードウェア開発技術を基に研究を推進している。ラボには室内の塵芥やホコリを極限的に取り除いたクリーンルームが設置され、光や電子ビームによる極微細パターンの形成、分子線やプラズマによる高品質成膜、イオンビームなどによる微細加工、電極形成や光ファイバ接続などの実装、あるいは原子間力顕微鏡や電子顕微鏡などによる微細形状評価や元素分析、その他各種のプロセスや測定のための設備・装置群が整備されている(写真1 )。これにより半導体や誘電体材料、有機材料などを用いた様々なデバイス技術の研究開発を推進することが可能となる。熟練技術者チームとNICT内関連研究グループが連携しながら、それら設備・装置の安定・安全な運用のために適切な管理を行い、標準的な使用条件を利用者へ提供できる体制を整えている。また、先端ICTデバイスラボのNICT本部(小金井)のクリーンルーム拠点ではISO 14001規格に基づく環境マネジメントシステムを構築することにより、防災のための安全対策や廃棄物適正管理あるいは排気、排水、騒音先端ICTデバイスラボラボ長(兼務)  山本 直克3.9図1 オープンイノベーション拠点としての先端ICTデバイスラボ