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日本でもオーロラが
日本で見られたオーロラ
 オーロラを見たいと、わざわざアラスカや北欧に出かける人々がいます。この神秘的で人を魅了するオーロラも過酷な宇宙環境変動のあらわれの一つです。そのオーロラが、最近日本でも何度か観測されています。これは、宇宙環境擾乱の原因となる太陽活動がピークを迎えているためです。ただし、日本で見えるオーロラは、『低緯度オーロラ』と呼ばれ、酸素原子の発光による赤いオーロラです。
写真1 2001年11月25日未明に北海道で観測されたオーロラ(北海道陸別町 津田浩之氏撮影)
写真1 2001年11月25日未明に北海道で観測されたオーロラ(北海道陸別町 津田浩之氏撮影)

 2001年11月25日未明、北海道の陸別でオーロラが肉眼で観測されました(写真1)。同じオーロラは滋賀県の信楽でも観測されています。これは、22日に太陽で発生したCoronal Mass Ejection (CME)と呼ばれる擾乱が2日くらいかけて地球に到達して起したものです。写真2は、NASAとESAが共同で打ち上げたSOHO衛星によって観測されたこのCMEです。また、全面に散らばっている白い点は、CMEに伴う高エネルギー粒子が計測器に影響を与えた結果です。
 2001年11月7から8日にかけて赤いオーロラが見られた時には、NHKの衛星放送が7日の午後6時頃から40分くらい中断しました(読売新聞)。9月にも同様の障害が太陽高エネルギー粒子の増加時に起こっています。原因は今のところはっきりしませんが、赤いオーロラを発生させるような過酷な宇宙の環境が引き起こした可能性は多いにあります。
写真2 SOHO衛星搭載されたコロナグラフによって観測された太陽からの擾乱 写真2 SOHO衛星搭載されたコロナグラフによって観測された太陽からの擾乱 (CME)(NASA・ESA提供)
写真3 CRLの宇宙天気予報センターで行われている予報会議の様子 写真3 CRLの宇宙天気予報センターで行われている予報会議の様子

宇宙天気の社会生活への影響と予報
 宇宙環境の擾乱は、放射線による宇宙飛行士の健康への影響や衛星障害、電離層異常電離(デリンジャー現象)による船舶航空無線や海外放送の途絶、地磁気嵐による送電システムの障害など様々な影響を我々の社会生活に与えます。このような影響を未然に防ぐためには、宇宙天気の予報が不可欠です。国際電波科学連合(URSI)傘下の国際宇宙天気情報サービス機構(ISES、図1参照)の日本の予報センターとして、当研究所では太陽フレア、太陽放射線、地磁気嵐および電離層嵐などのデータをほぼリアルタイムで収集し、宇宙天気の予報を行っています。写真3は予報センターで行われる予報会議の様子です。宇宙環境の現況と予報の情報は、e-mail や FAX で固定ユーザに提供され、Web (http://hirweb.crl.go.jp/index-j.html)やテレホンサービス(電話番号は、0162-22-4949, 022-222-1919, 029-265-7575, 042-321-4949, 06-6949-4949, 0993-34-1919, 098-895-4949)で一般ユーザにも公開されています。興味のある方はぜひアクセスしてみて下さい。
図1 国際宇宙天気情報サービス機構(ISES)の予報センター(赤い丸印)
図1 国際宇宙天気情報サービス機構(ISES)の予報センター(赤い丸印)

宇宙天気予報の今後
 より精度の高い予報を行うため、極域短波レーダネットワークや広域地磁気観測網の構築など地上観測を充実させたり、観測衛星から太陽風データやオーロラ画像データの直接受信を行ったり、新しい予報アルゴリズムの開発などを手がけたりしています。今後、宇宙利用の高度化が進むにつれて、宇宙天気予報は我々の生活にますます不可欠なものになっていくことでしょう。

電磁波計測部門 宇宙天気システムグループ(http://www2.crl.go.jp/dk/c231/index.html