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現在、VHF帯(30〜300MHz)等を用いる自営用移動通信システムは、ARIB STD T-79 (市町村デジタル移動通信システム) に代表されるように防災無線としても極めて重要な用途に用いられています。その一方、現状のシステムでは伝送帯域幅は非常に狭く制限され、音声伝送が主要な通信メディアとなっています。また、通信のトポロジ(通信網の構成)についても、無線基地局の存在を前提とした中継通信が中心となっています。CRL横須賀無線通信研究センターでは、平成14年度より、こうした自営用無線通信システムの高度化を目指した検討を行っています。具体的には、以下のような二つの要素技術の実現を目標としています(図1)。
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端末同士が基地局を介さず自律分散的に経路選択・中継通信を行うことで、万一災害によって無線基地局等が損壊した状況下でも十分な情報伝達を可能にします。図1は、被災地において救助隊員
(中央下) が要救助者 (右下) を発見し、救急車 (右上) に状況を伝えようとする事例を表していますが、この場合、救助隊員と救急車の中間を走行する別の救助隊員が中継を行うことで、通信はより確実に伝達されます。また、このような経路選択・中継通信は自律分散的に実行されることを前提としており、救助隊員と救急車はお互いの位置等について全く関知する必要がありません。
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私たちは、信号の広帯域化や、多値変調等による伝送速度の向上を図るとともに、OFDM(直交周波数分割多重)等の導入による耐マルチパス性の確立等について検討を行います。本技術は移動通信環境下における通信品質の向上をもたらします。本検討方式では、特に防災無線において効果が期待されることから動画像伝送の実現を目指しています。
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前述のような、各端末の移動に応じて適応的かつ自律分散的に経路選択・中継通信を行う形態を、私たちは特に動的マルチ ホップ通信と呼び、具体的にこれを実現するための効果的なアルゴリズムを提案しています。このようなアルゴリズムについては、現在多くの検討・方式提案がなされています。しかし、本検討で想定するようなVHF帯通信環境の場合、無線 LAN 環境と比べると通信距離が比較的長く、かつ不安定であることから、既存のものとは異なり、より効果的なアルゴリズムが存在すると考えられます。 提案する動的マルチホップ通信のアルゴリズムの概要を図2に示します。各端末は、他の端末からの受信電力を測定することで、スター形の端末グループを作ります。スター形のトポロジを形成する各端末間リンク(図中の実線)は一定以上の通信品質が保証され、同一グループ内では、各端末がそのトポロジに基づく中継テーブルを保持しています。パケット送信時、宛先端末が同一グループであった場合にはテーブルに従い中心の端末(リレー役端末)を介するグループ内中継によって信頼度の高い通信が達成されます。さらに、宛先端末が同一グループでない場合には、そのパケットは宛先端末と同じグループに属する端末によっても受信され、前記のグループ内中継によって宛先に送られるようになっています。
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図3は提案システムにおける通信端末の試作機の外観を示します。本装置は3辺のうち一番長い横幅が約30cmで、車両に搭載しての屋外試験等が容易にできるように小型化されています。また、表1の諸元が示すように、本装置では、使用周波数帯、変調方式、アクセス方式について複数の方式をそれぞれ選択し、評価できるようになっています。また、本装置は上位層のサービスとして、IPに対応しているため、現在普及している
IP 通信機器における通信サービス を実現することができ、同時にこうした通信機器を外部接続することで、機能拡張も容易になります。
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平成16年度には、本検討の総合実証試験を予定しており、複数の地域において動作試験を行い、動的マルチホップ通信を含んだ提案システムに関する包括的なデータをまとめる予定です。 | ||||
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