昨年度の1年間にわたり、CRLの将来ビジョンを部外の有識者からなる委員会により検討していただいた。この将来ビジョン検討委員会の設置は、平成8年度に実施した外部評価により、必要性が指摘されたことを受けたものである。本年3月に、将来ビジョン検討委員会は、最終報告書をとりまとめ、「ビジョン21」として所内外に公表したところである(CRL NEWS、1998年5月号参照)。この中で、CRLはその使命を明確にし、情報通信分野における世界で有数の中核的な研究機関を目指すべきであるという指摘がなされている。 ![]() (1) 新規研究課題 ![]() CRLの組織については、平成9年度に急速に拡大する情報通信分野の研究ニーズに対応するため、本所の部の改廃とチーム制の導入による大幅な組織改正を行った。さらに、無線通信研究分野における民間との連携による研究の強化のために、横須賀無線通信研究センターを開設した。今年度はこれらの組織の中身の充実が必要である。 本年度の研究計画や研究環境等におけるトピックスを紹介した。既に述べたようにCRL将来計画である「ビジョン21」の具体化を図ることが本年の重要課題である。今後、行政改革の進展により我が国の研究開発体制はかなりの変革が予想される。このような状況においても、「ビジョン21」に示された研究分野の重点化と活力ある研究体制の実現を図り情報通信分野における中核的研究機関の実現を目指していきたい。 |
インターネットや携帯電話の普及に伴い、情報量の多い映像や音声などを、テキスト素材のようにデータ量が軽く、容易に編集・加工ができ、効率良く蓄積・伝送できる知的な符号化技術の実現が求められています。当所では、各種医療情報のデータベース化の研究を進めており、その対象のひとつに、聴診音を符号化して蓄積・検索・伝送する技術の検討を行ってきました。このたび研究成果として、大日本印刷(株)と共同で、心臓の鼓動や呼吸器の音、さらには鳥の鳴き声などの様々な音響信号を、楽譜の形式に自動変換するオーディオ符号化技術を開発しました。自動変換された音符のデータ形式として、国際標準のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)を採用しています。
聴診音のMIDIによる楽譜化技術は、聴診器による診断支援や、医療教育、患者への説明などへの応用が期待されます。具体的には、循環器病の診断への補助として、経験が少ない医師が異常心音を診断するうえで、視覚面での診断の確認に利用できる可能性があります。また、聴診器の音を楽譜の形で視覚的に患者に見せ、心臓の異常を音符のリズム変化で説明することもできます。さらに、患者の心臓の状態に同期して音楽を自動演奏させれば、病室の心電図モニター音を人にやさしいBGMに変えることも夢ではなくなりました。一方、聴診音をMIDI符号化することで、記録したり伝送する情報量を大幅に圧縮できる利点があります。たとえば、心音や肺音のMIDI符号化ビットレートは180bpsから800bps程度と(PCMに比較して約1/1000)データ圧縮率が極めて高いため、救急時の聴診音の電話回線やインターネットによる伝送も容易に行うことができます。また、聴診音を電子カルテにMIDI形式のデータとして取り込むことも可能となり、保存や転送にも威力を発揮することができます。
試作したソフトウエアは、聴診器の音以外に、鳥の鳴き声などもパソコン上でリアルタイムに楽譜で表現することができます。さらに、高精度な計算を行えば、オーケストラ譜のような複数のトラックに変換することもできます。いままで、MIDIデータを得る手段として、音楽(器楽曲)を自動的に楽譜化する技術(自動採譜)に関する研究は過去に多くありましたが、音楽以外の用途、特に心音や肺音などの医療聴診音や、鳥の声を対象としたトライアルは世界初です。これまでの研究対象であった器楽曲の場合、MIDI対応電子楽器でミュージシャンに演奏してもらえれば、リアルタイムにMIDIデータが自動入力されるためニーズはそれほど高くありません。しかし、楽譜が存在しない心臓の鼓動や鳥の鳴き声、歌声などをMIDIに変換できると、聴診音による自動診断や医学教育などの医療分野での利用の他、編集・加工・再生などのオーディオ情報の付加価値化や、現代音楽の作曲の素材としての利用などへの応用が期待されます。 |
逓信省電気試験所平磯出張所が開設された当時の建物で、無線史料館として今日まで残っていた、平磯宇宙環境センター1号庁舎(1914年(大正3年)12月築)が、老朽化により危険な状態になったため、4月10日に取り壊されました。 解体作業には元所長の若井登氏が立ち会い、我が国の無線通信技術の発展を84年間見守ってきた木造建造物の最期を見届けました。(企画部企画課) |
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通信総合研究所の夏の恒例行事「施設一般公開」の準備が、小金井本所をはじめとして支所・観測所で着々と進められています。本所では、昨年に引き続き今年も2日間開催を行うこととなり、また支所・観測所でも土曜日開催を行うこととなりました。 |