熊谷 博 

 昨年度の1年間にわたり、CRLの将来ビジョンを部外の有識者からなる委員会により検討していただいた。この将来ビジョン検討委員会の設置は、平成8年度に実施した外部評価により、必要性が指摘されたことを受けたものである。本年3月に、将来ビジョン検討委員会は、最終報告書をとりまとめ、「ビジョン21」として所内外に公表したところである(CRL NEWS、1998年5月号参照)。この中で、CRLはその使命を明確にし、情報通信分野における世界で有数の中核的な研究機関を目指すべきであるという指摘がなされている。
 さらに、このような目標のもとに、次の4つの重点研究テーマを掲げた。本年度から、当所の研究内容をこの重点研究テーマのもとに再編し、その中でより中心的課題への取り組みを強化していくことが求められている。重点研究テーマとその中の主要研究課題(キーワード)は以下のとおり:

(1)次世代情報通信ネットワークおよびその利用に関する研究開発

 ヒューマン・ケア情報通信技術;情報通信セキュリティ技術;通信ネットワーク技術;高機能情報通信プラットフォーム技術

(2)周波数資源の開拓に関する研究開発

 未利用周波数帯の開拓および既利用周波数帯の有効利用技術;電波・光に関する新機能デバイス・極限技術;無線機器および生体に関する電磁環境技術;高精度標準周波数・標準時系技術
(3)環境計測及び環境情報の高度利用に関する研究開発

 電波・光を用いた先端的宇宙・地球環境計測技術;環境情報の取得およびその高度利用技術

(4)人間・生物情報機能に学ぶ情報通信の研究開発

 生物の情報機構に関する研究;ヒューマン・コミュニケーションメカニズムに関する研究

 平成9年度のもう一つの重要な出来事として、国の行政改革の方針が決定されたことがある。行政改革の報告書では、郵政省は自治省、総務庁等と合体し総務省となること;郵政事業は5年後の公社化を前提とした外庁とすること等が盛り込まれた。一方、科学技術関係では、従来の科学技術会議に代わり、人文科学も含む我が国の科学技術の総合戦略を策定する総合科学技術会議を内閣府に設置すること;国立研究機関に対しては小規模研究機関等の統廃合を行うとともに、国として重要かつ総合的に取り組む必要のある研究分野においては、中核的な研究機関を育成すること;ほとんどの国立研究機関に対しては、独立行政法人への移行について検討を行うこと等が求められている。これらの改革は2001年からの移行を目指している。現在、中央省庁等改革基本法が成立し、いよいよ行政改革具体化の作業が着手されたという段階である。

(1) 新規研究課題

 昭和63年度以来、関西支所を中心として実施してきた、「電気通信フロンティア研究開発」は、平成9年度で終了した。今年度からは、これまでの蓄積をもとに情報通信技術にブレークスルーをもたらす基礎研究として、「情報通信ブレークスルー基礎研究21」を開始する。この中では、以下の3つの重点研究領域の研究を実施する:
・フレンドリーなコミュニケーション社会基礎技術の研究
・生命の情報通信機能の解明と適用の研究
・情報通信デバイスのための新機能・極限技術の研究

 本研究プロジェクトにおいては、従来よりも、より緊密な産学との連携を図るため、リーダを含む外部研究者とCRL研究者からなるチームを構成し、関西支所内で研究を実施する体制を導入する(結集型研究)。これらにより、これまでの基礎研究で培ってきた成果を生かし、一層の産学官連携を進めるとともに、成果の社会への還元についても真剣な検討が必要である。郵政本省を含めた「情報通信ブレークスルー基礎研究21」全体の研究推進体制を図1に示す。



図1 「情報通信ブレークスルー基礎研究21」
全体の研究推進体制

  これ以外で、平成10年度から開始する新規研究項目は、以下のとおり:

[次世代情報通信ネットワークおよびその利用に関する研究開発]
・Ka帯を用いた広帯域中継技術
・高度自動車運転支援のためのミリ波帯による車車間通信技術
・高度移動通信網最適制御伝送技術
・Ka帯における高速衛星通信技術
[周波数資源の開拓に関する研究開発]
・無線機器等の高精度測定技術
[環境計測及び環境情報の高度利用に関する研究開発]
・地球変動観測高度化のための情報通信技術の開発


(2)継続研究課題

 「情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発」では、超高速ネットワーク、汎用情報通信端末、映像情報データベースを中心として平成7年度から研究開発を行ってきた。本年2月には中間報告会を実施し、既にいくつかの研究項目では、独自性のある成果が得られつつある。本研究は、当所にとってはこれまでにない大型の技術実証型プロジェクトである。今後は、独自の技術の蓄積と基盤技術としての成果の社会への還元を図り、情報通信将来技術のなかで大きなインパクトを持つ先導的技術の実証実験を実施していく。図2に、これまでの成果の1例として、次世代医療画像処理・通信システムを示す。


図2 次世代医療画像処理・通信システム

 当所で研究開発を行ったミッションが搭載された人工衛星が、平成9年度には3機打ち上げられた。平成10年2月に打ち上げられた高度通信放送技術衛星(COMETS)は、残念ながら打ち上げロケットの不具合から静止軌道投入には失敗した。しかしその後、移動衛星として実験を実施するための軌道変更に成功し、まもなく実験が開始される予定である。平成9年11月に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星(TRMM)には、CRLが宇宙開発事業団と共同開発した世界初の衛星搭載降雨レーダが搭載された。本衛星は日米共同で開発されたもので、現在まで日本側のセンサー(降雨レーダ)と米国側のセンサーともに順調に動作している。これまで初期チェックおよびアルゴリズムの調整を終え、まもなくユーザへのデータ公開が始まる予定である。CRLでは、今後アルゴリズム改良やデータ検証および衛星データを使った降雨システムの研究を実施予定である。TRMMと同時に打ち上げられたETS-VIIに関しても、機器のチェックおよびロボットアームを使ったCRL担当の実験が順調に実施されている。
 上記のトピックス以外の研究についても、ビジョン21の重点テーマに沿って研究開発を推進し、各テーマの中でより中心的課題に注力できるように研究課題と体制の整備を継続的に行っていく必要がある。また平成9年度から開始した長波による標準電波の発射施設の整備は、今年度末の完成を目指して作業が進められている。
 平成10年度当初の全研究プロジェクトと担当組織を表1に示す。
 
表1 平成10年度研究開発プロジェクト一覧(平成10年4月現在)
 CRLの組織については、平成9年度に急速に拡大する情報通信分野の研究ニーズに対応するため、本所の部の改廃とチーム制の導入による大幅な組織改正を行った。さらに、無線通信研究分野における民間との連携による研究の強化のために、横須賀無線通信研究センターを開設した。今年度はこれらの組織の中身の充実が必要である。
 平成10年度には新たに、地球環境計測部のデータ応用技術研究室の設置が認められた。この研究室においては、地球環境データの利用技術の研究として、ネットワークの高度利用や多様な観測データの融合解析技術の研究を実施する。
 研究の活性化にとって、研究者の交流の促進は不可欠である。このために、研究者の流動化を進める制度として、研究公務員の任期付き任用制度が昨年度半ばから開始された。これは、科学技術基本計画(平成8年度制定)の中で提起されたものである。CRLでは、昨年11月からこの制度を利用し、慶應義塾大学の村井純教授を招聘型任期付き研究者として、当所の通信システム部超高速ネットワーク研究室長として招聘し、研究リーダになっていただいた。さらに、平成10年度からは、若手の任期付き研究者の採用も行った。任期付き雇用制度は、流動化が乏しいわが国社会では、長期的に見て、克服すべき問題をいくつか抱えていることも事実である。しかしながら、任期付き制度により、研究者本人とともに研究所側にとっても多大なメリットがあると信じており、本制度の利用の拡充を図りたい。
 研究者の流動化は、任期付き任用制度以外でも、徐々に浸透し始めており、いわゆるポストドクターに類する制度の拡充が図られている。このような例として、STAフェローシップや科学技術特別研究員制度があり、これらを積極的に活用していく必要がある。また、科学技術振興調整費によるCOE化設定領域に選定されている「先端的光通信・計測に関する研究」においても、多数のポストドクタークラスの研究者が研究に参加しており、それにより研究の活性化が図られ、多くの成果が出ている。今後、CRL自身でもこのような制度の拡充を図っていくことが不可欠である。
 研究所の研究環境の充実の一環として、広報機能の強化も重要な問題である。国の研究機関として、研究成果の国民への還元とともに活動自体を国民へわかりやすい形で提示することが求められている。特に、行政改革の動きの中で、国の研究所として、その役割を国民各層に理解してもらうことは、研究所の存続にとっても無視できない影響を持つと考える。このような研究所の広報にとって、最近はネットワークを利用したWEBによる広報が重要であり、ホームページの充実と頻繁な更新を行う体制が求められる。この他にも成果の報道発表、ニュース誌、機関誌、研究発表会、一般公開等の改善の努力を続ける必要がある。

 本年度の研究計画や研究環境等におけるトピックスを紹介した。既に述べたようにCRL将来計画である「ビジョン21」の具体化を図ることが本年の重要課題である。今後、行政改革の進展により我が国の研究開発体制はかなりの変革が予想される。このような状況においても、「ビジョン21」に示された研究分野の重点化と活力ある研究体制の実現を図り情報通信分野における中核的研究機関の実現を目指していきたい。

(企画部企画課長)

 

 

 平成10年度予算案は、平成9年12月20日の大蔵案内示、その後の復活折衝を経て、同月25日政府案が閣議決定された。第142回通常国会に1月19日提出され、4月8日政府案どおり可決成立した。

平成10年度予算の内容は
   総額209億7,138万円
   9年度当初予算比4.89%(9億7,848万円)の増。
内訳を見ると
   人件費は、33億1,792万円
   (9年度比0.21% 682万円の増)
   物件費は、175億9,076万円
   (9年度比5.82% 9億6,782万円の増)
旅費は、6,269万円
   (9年度比6.51% 383万円の増)
となっている。

 事項別内訳を別表に示すが、その概要は次のとおり。

 昭和63年度から開始した「電気通信フロンティアの研究開発」の実績を踏まえ、情報通信分野の基礎的・学術的な研究ポテンシャルの一層の向上による新たなブレークスルーの発生を目指した「ブレークスルー基礎研究21」を新たにスタートさせた。
(平成10年度経費 13億9,617万円)

(1)地球環境計測技術の研究開発
★地球環境保全国際情報ネットワークの推進
 地球の温暖化・オゾン層破壊等のグローバルな環境問題に対処するため、地球環境国際情報ネットワークの構築について研究開発を行うことが認められた。
(平成10年度経費 1億9,866万円)

(2)電波利用料
★Ka帯を用いた広帯域中継技術
 広帯域アクセス中継システムの構築に向けて、Ka帯を利用したATM無線伝送技術、多元接続技術、高性能アンテナ技術等の試験業務を行う経費が認められた。
(平成10年度経費 4億6,000万円)
★高度自動車運転支援のためのミリ波帯による車車間通信技術
 自動車運転支援に必要な車車間通信のための各種電波利用システムを実用化するにあたって、ミリ波帯による車車間通信技術に必要な要素技術の選定とその要素技術の実証試験を行う経費が認められた。
(平成10年度経費 2億6,200万円)
★Ka帯における高速衛星通信技術
 画像伝送を可能とする広い周波数帯を確保できるKaバンド(30/20GHz)での移動体衛星通信システムを早期に実現するための技術試験を行う経費が認められた。
(平成10年度経費 2億4,812万円)
★高度移動通信網最適制御伝送技術
 既存の移動通信システム等のネットワークにおいて、回線利用の効率化を実現する高度回線技術や狭帯域高効率無線伝送技術といった高度な移動通信伝送技術の確立並びに導入に必要な実証試験及び試験分析を行う経費が認められた。
(平成10年度経費 4億2,818万円)
★無線機器等の高精度測定技術
 電波反射箱による測定法開発を進め、基準との置換方法を確立し高精度測定のために必要な温度試験等に対応した試験装置の開発を行う経費が認められた。
(平成10年度 12億円)
(1)地球環境計測部にデータ応用技術研究室の新設が認められた。
(2)研究員4名の増員が認められた。
 要員は、研究職5名の増員要求のうち4名が認められ、定員削減計画による行政職3名削減が行われ合計426名と総数で1名増となった。この結果研究職は307名になった。

STEP計画期間における関連観測の強化
地球環境計測・情報ネットワークに関する研究開発
海底電磁界観測システムの研究開発
衛星間通信技術の研究開発
以上の4つのプロジェクトが終了した。
(総務部会計課)

平成10年度予算額総括表



飯作  俊一

 インターネットや携帯電話の普及に伴い、情報量の多い映像や音声などを、テキスト素材のようにデータ量が軽く、容易に編集・加工ができ、効率良く蓄積・伝送できる知的な符号化技術の実現が求められています。当所では、各種医療情報のデータベース化の研究を進めており、その対象のひとつに、聴診音を符号化して蓄積・検索・伝送する技術の検討を行ってきました。このたび研究成果として、大日本印刷(株)と共同で、心臓の鼓動や呼吸器の音、さらには鳥の鳴き声などの様々な音響信号を、楽譜の形式に自動変換するオーディオ符号化技術を開発しました。自動変換された音符のデータ形式として、国際標準のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)を採用しています。


 MIDIは電子楽器どうしの演奏制御情報に関する国際交換規約です。一般に、楽譜に比べ多くの情報をもち、例えば楽譜上でp(ピアノ=弱く)やf(フォルテ=強く)とかで表示される音符の強さ情報が128段階の数値表現になっています。このように、MIDIは音の高さ、音色、強さ、長さを数値化したもので、いわば電子楽譜とも呼ぶべきものです。MIDI符号化音の再生には、カラオケなど既存のコンピュータ・ミュージック関連のインフラをそのまま活用できます。しかし、音符を少ない情報で表現できるMIDIにおいて、音の素材は今まで音楽それも器楽曲に限定され、万能のオーディオ符号化に応用するには無理がありました。このため現状では、音をデジタル化する方法として、CDで採用されているPCM(Pulse Code Modulation)が基本になっていますが、編集・加工が難しい、データ量が増大化するという問題を抱えていました。

 図1 MIDI符号化アルゴリズム
 今回開発したオーディオ符号化技術は、図1に示すようにピーク検出、信号区間検出、区間の音符表現という3つのステップからなり、検出された区間が最終のMIDIデータを決定します。具体的には、波形のピーク部分を検出し、さらにその中で一定の信号強度が連続する区間(ピッチ情報がほぼ均一に並んでいる部分)を1つの音符として、音の強度、高さ、長さを符号化します。この手法により符号化されたMIDIデータをMIDI音源に転送すれば、様々な音で再生ができます。
 開発したソフトウエアを使用して、聴診トレーニングの医学教育用CDに録音されている代表的な心音や肺音を符号化してみました。システムのハードウエアとしては、オーディオ機能内蔵のWindows95パソコンにMIDI音源を接続したとても簡単な構成です。また、市販の聴診器のピックアップ部にPIN型マイクロフォンを取付けたものをパソコンに接続し、心音や肺音を簡易的に入力できるようにしてあります。符号化する音の入力データ形式はマイクロソフトWAV形式、出力形式は標準のSMF(Standard MIDI File)フォーマットです。
 
図2 正常心音の符号化画面  
 図2に正常な人の心音の符号化画面を示します。図2では、入力された心音波形(図2左上)に対してMIDI 変換を実行し独自の楽譜形式で表示しています(図2下)。各黒の矩形それぞれが1つの音符を示しています。横軸は、時間軸で矩形の位置と幅で音符の位置と長さを表しており、垂直の点線は小節線、線間は0.5秒です。縦軸は、矩形の上端位置と高さで音符の音程と高さを表しており、水平実線がA3音(440Hz)、水平点線間は1オクターブです。さらに、それらの MIDI データの内容をさらに五線譜上で表示しています(図2右)。心音や肺音などの聴診音を単一のメロディに変換するシングルトラック処理は、パソコン上でリアルタイムに行うことができます。心音は、I音〜IV音の四つの音から構成され、正常者はその中でI音とII音の二つだけが聞こえ、II音のほうがI音より音程が高く、短いという性質があります。心臓の鼓動をよく「ドキン、ドキン」と表現しますが、このうち「ド」がI音、「キン」がII音に相当します。MIDI符号化結果による正常な心音では、図2のようにI音とII音の音符が周期によって1全音ほどの揺れはあるものの、II音は規則正しく並んでいることが確かめられました。 
 

図3 異常心音の符号化事例  
 次に、図3に異常な人の心音の符号化結果を示します。異常心音は基本的にI音からIV音までのいずれかが強くなる、弱くなる、分裂する、間隔が変わるのどれかになります。僧帽弁狭窄によるI音亢進の症例では、I音が3全音ほど上がっている様子が示されています(図3の1)。また、心房中隔欠損症で収縮期雑音があるII音分裂の症例や拡張型心筋症などによる重合奔馬調律(ギャロップリズム)の症例では、複数の音符に分かれて示されています(図3の(2)〜(4))。このように、個別の症例に基づく異常な心音は、本符号化アルゴリズムを用いることにより、それぞれパターン化された特徴的な音符形式となることが確められました。

 聴診音のMIDIによる楽譜化技術は、聴診器による診断支援や、医療教育、患者への説明などへの応用が期待されます。具体的には、循環器病の診断への補助として、経験が少ない医師が異常心音を診断するうえで、視覚面での診断の確認に利用できる可能性があります。また、聴診器の音を楽譜の形で視覚的に患者に見せ、心臓の異常を音符のリズム変化で説明することもできます。さらに、患者の心臓の状態に同期して音楽を自動演奏させれば、病室の心電図モニター音を人にやさしいBGMに変えることも夢ではなくなりました。一方、聴診音をMIDI符号化することで、記録したり伝送する情報量を大幅に圧縮できる利点があります。たとえば、心音や肺音のMIDI符号化ビットレートは180bpsから800bps程度と(PCMに比較して約1/1000)データ圧縮率が極めて高いため、救急時の聴診音の電話回線やインターネットによる伝送も容易に行うことができます。また、聴診音を電子カルテにMIDI形式のデータとして取り込むことも可能となり、保存や転送にも威力を発揮することができます。

 試作したソフトウエアは、聴診器の音以外に、鳥の鳴き声などもパソコン上でリアルタイムに楽譜で表現することができます。さらに、高精度な計算を行えば、オーケストラ譜のような複数のトラックに変換することもできます。いままで、MIDIデータを得る手段として、音楽(器楽曲)を自動的に楽譜化する技術(自動採譜)に関する研究は過去に多くありましたが、音楽以外の用途、特に心音や肺音などの医療聴診音や、鳥の声を対象としたトライアルは世界初です。これまでの研究対象であった器楽曲の場合、MIDI対応電子楽器でミュージシャンに演奏してもらえれば、リアルタイムにMIDIデータが自動入力されるためニーズはそれほど高くありません。しかし、楽譜が存在しない心臓の鼓動や鳥の鳴き声、歌声などをMIDIに変換できると、聴診音による自動診断や医学教育などの医療分野での利用の他、編集・加工・再生などのオーディオ情報の付加価値化や、現代音楽の作曲の素材としての利用などへの応用が期待されます。
(情報通信部長)

 

逓信省電気試験所平磯出張所が開設された当時の建物で、無線史料館として今日まで残っていた、平磯宇宙環境センター1号庁舎(1914年(大正3年)12月築)が、老朽化により危険な状態になったため、4月10日に取り壊されました。 解体作業には元所長の若井登氏が立ち会い、我が国の無線通信技術の発展を84年間見守ってきた木造建造物の最期を見届けました。(企画部企画課)


 

表彰区分 氏名 又は 団体名 功 績 概 要
電波の日
大臣表彰 団体
米国航空宇宙局 ゴダード宇宙飛行センター
TRMMプロジェクトチーム
熱帯降雨観測衛星(TRMM)本体の開発
情報通信月間
志田林三郎賞 個人
カリフォルニア大学教授
    伊藤 龍男
マイクロ波、ミリ波アンテナ技術に関する先駆的業績
電波の日
所長表彰 個人
大東設備工業(株)研究所出張所長
    林 満
施設の保全
電波の日
所長表彰 団体
株式会社アスキー未来研究所 日加国際ネットワーク実験実施への貢献
株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ
国際電信電話株式会社
日本電信電話株式会社 法人営業本部
第一営業部公共営業部
三菱電機株式会社郡山製作所
松下電器産業(株)九州マルチメディアシステム研究所 手話認識の研究
大日本印刷(株)C&I総合企画開発本部 マルチメディアデータベースの知的検索技術
田中電気株式会社 大型中波レーダの建設及び建設に伴う設置場所の提供
東邦通信株式会社
株式会社東芝小向工場 TRMM搭載降雨レーダ開発における貢献
日本電気(株)無線事業本部 宇宙開発事業部


 

 通信総合研究所の夏の恒例行事「施設一般公開」の準備が、小金井本所をはじめとして支所・観測所で着々と進められています。本所では、昨年に引き続き今年も2日間開催を行うこととなり、また支所・観測所でも土曜日開催を行うこととなりました。
 通信総合研究所の持つ最先端技術の一端を直接肌で感じることの出来るチャンスです。子供から大人までどなたにでも楽しめる催しを準備しておりますので、多数御来場下さいますようお願いいたします。

(註) 公開時間は全て10:00〜16:00
入場無料、事前申込不要。
公 開 日 公開場所/お問合せ先
7月31日(金)・8月1日(土) 小金井本所 
042-327-7465
8月1日(土) 平磯宇宙環境センター 
029-265-7121
8月1日(土) 鹿島宇宙通信センター 
0299-82-1211
8月1日(土) 関西先端研究センター 
078-969-2100
8月1日(土) 稚内電波観測所 
0162-23-3386
8月1日(土) 犬吠電波観測所 
0479-22-0871
8月1日(土) 山川電波観測所 
0993-34-0077
8月1日(土) 沖縄電波観測所 
098-895-2045