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原田 博司 | |||||
1 はじめに 昨今の携帯電話やPHSの爆発的な普及に見られるように、移動通信の進展はめざましいものがあり、「移動通信なしの生活」というものはもはや考えられない状態になりつつある。そして、現在は音声通信のみの機能が中心の移動通信も、将来的には本格的なマルチメディア対応のサービスを提供出来ることが望まれ始めている。
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2 実現上の問題点とその対策 マイクロ波帯で移動通信を行う場合、まず周波数が従来より高くなり波長が短くなるため、伝搬損失が大きくなり、さらに移動に伴う周波数変動である最大ドップラー周波数も大きくなるため、伝搬環境はより厳しくなる。また、動画像で現行テレビ放送並の品質を確保しようとすると、10−6秒に1個以上のデータ(ビット)を伝送するMbpsオーダーの高速の情報速度が必要となり、この場合、信号の伝送に10−6秒以上の遅延が生じると他の情報信号に干渉を与えることになる。すなわち遅延波によるシンボル間干渉による誤り発生が品質劣化の支配的要因となる。対策技術としては、アダプティブアレーアンテナ、適応等化器、高速の情報を複数の低速な情報信号に束ねて送信する並列伝送等の技術が考えられる。いずれの技術も重要な研究課題ではあるが、装置化に対する容易性を重視し、本研究では並列伝送を採用してこのマイクロ波帯の厳しい伝搬環境に耐えうる送受信機構成について検討を行った。 |
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3並列伝送方式 並列伝送方式とは先に述べたように高速の情報を複数の低速な情報信号に分解し、その分割した低速な各情報信号に識別子を付け、その後それらを束ねて送る伝送方式である。識別子としては、相異なる周波数を用いるもの、もう一つは相異なる符号を用いるものがあり、それぞれ周波数分割多重伝送(FDM)方式、符号分割多重伝送(CDM)方式と呼ばれる。周波数分割多重伝送方式の例としてはディジタル放送の分野で用いられている直交周波数分割多重伝送(OFDM)方式があげられるが、高速な周波数変動に弱いという問題点がある。それに対して符号分割多重伝送方式においては分離された複数の各チャネルの低速な情報に対して符号を重畳してその後束ねて伝送するため、各チャネルの信号速度は重畳する符号の速度に依存する。この符号の速度はかなり高速で帯域も広いため、結果として周波数変動に対しての耐性が周波数分割多重伝送方式よりあるものと推定される。そこで今回は符号分割多重伝送方式に着目して伝送を行った。
この提案方式により遅延波による影響を軽減でき、また、送信側においては一つの種類の符号しか用いていないため 受信側はその一つの符号がもつ特徴(自己相関特性等)のみをあらかじめ知っておけば高速にかつ安定に受信することができる。以上の方式を用いて符号分割多重伝送方式の伝送装置の開発を行った。その送信機及び受信機の構成を図2に示す。 |
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4フィールド試験 フィールド試験では高速移動環境下での試作伝送装置の特性を調べるため、高度道路交通システム(ITS)用の専用コースを用いて測定を行った。また、実験においては図2の送信機を移動する車側に、また受信機を基地局に設置した。
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5おわりに
本試験の成功により、音声や動画像等の大容量情報をマイクロ波周波数帯を用いて高速移動通信環境においても伝送できることを実証した。本研究プロジェクトでは今回の成功を踏まえ、高度道路交通システム(ITS)等の路車間及び車車間通信における大容量データ通信および自動車や列車などの高速移動体内からも利用可能な高品質モバイルマルチメディア通信の実現を目指していく予定である。 |
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(横須賀無線通信研究センター 無線伝送研究室) | |||||
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![]() ![]() ![]() ![]() 光通信技術研究室 ![]() ![]() |