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結果を得た。このことから、同地点では、車両の影響ではない何らかの理由で通信に遅延が生じていたと推測される(実際、動画再生の一時停止が見られる際には、必ずPING応答時間に若干の上昇がみられた:図5)。当該テストフィールドの200~300 m近傍に携帯電話基地局が3基あるが、その影響を含め、今後このような現象につき改めて調査することとしたい。屋内実験平成28年2月26日(日)に東京都小金井市のNICT本部4号館講堂(20 m×17 m×天井高 7 m)で実施した実験は、災害により倒壊危険が生じた重要施設内での探索業務を模擬し、室外の地上局から視覚的に隔離された撮影ドローンで取得した画像データを、中継ドローンを介して、地上局で受信するという状況で行った(図6)。実験は、1回10分程度のものを数回実施した。建屋内を撮影ドローンによって探索するというシナリオの下、ドローン間及び中継ドローンと地上局間の距離は、共に約10 mと近距離としつつ、さらに、撮影ドローンと地上局間にパーティション(幅 7.8 m ×高さ1.8m)を設置し、地上局へは撮影ドローンからの電波が直接届かないという想定で実験を行った。暗号化された動画データ通信と動画再生手順について屋外フィールド実験と同様に実施したが、あくまで室内での通信状況を確認するという目的の下、中継切断の実験は行わなかった。地上局–撮影ドローン間の通信状況については、室内環境でもしっかりとデータ伝送ができ、動画再生ができるかという点のみ確認するものとして、地上局での再生動画をハンドカメラで撮影する方法でのみ観察した。また、再生動画のほか、実験自体の様子もハンドカメラで撮影している(NICTプレスリリース『ドローンによる動画データの完全秘匿中継技術を開発』参照:http://www.nict.go.jp/press/2017/03/22-1.html)。地上局での動画再生は、リアルタイム、かつコマ落ちすることなくスムースに行われ、上述の屋外実験とは異なり、動画再生が一時停止するという現象も生じなかった。これにより、室内環境においても、暗号化・復号及び動画中継がほぼ問題なく機能することが確認された。今後の展望今後は、暗号化・復号装置をよりコンパクトかつ信頼性の高いものとする開発を進める。また、今回用いた機器構成によるデータ伝送によりどのような電波強度分布となるか、無反響室などにおいて通信実験を実施・検証し、よりよい中継技術の開発に活かす。さらに、人の立ち入るのが難しい重要施設の監視などへ活用するために信頼性試験を継続するとともに、撮影・中継ドローンの台数を増やし、広域で多様な中継ネットワークを柔軟に構成するための技術開発にも取り組んでいく。【参考文献【1伊藤寿之ら “ドローン通信システムの安全性強化とその応用,” 2016年電子情報通信学会基礎・境界ソサイエティ・NOLTAソサイエティ大会,AI-3-5,SS-33,2016年9月2伊藤寿之ら “高秘匿ドローン通信ネットワーク,” 2017年電子情報通信学会総合大会,AI-3-2,SS-50,2017年3月3C. E. Shannon, “Communication Theory of Secrecy Systems,” Bell System Technical Journal, vol.28(4), pp.656–715, 1949.4M. N. Wegman and J. L. Carter, “New hash functions and their use in authentication and set equality,” Journal of Computer and System Sciences, vol.22, no.3 pp.265–279 (1981).西澤亮二 (にしざわ りょうじ)未来ICT研究所量子ICT先端開発センター研究技術員ドローン通信67図6屋内実験の機器位置関係。各ドローンに手動介入のための監視者を配置(地上局と中継ドローン間、各ドローン間の距離はいずれも約10m)ステージロビー壁ドア開放廊下階段ドア遮へい物被写体17m20m飛しょうして被写体に接近ドアドアドアドアドア※室内天井高7m地上局撮影ドローン中継ドローン中継ドローンへ動画伝送地上局へ動画伝送393-4 ドローンを用いた動画秘匿伝送
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