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2.2移動通信ビジネスの創生と担い手本稿においてマイクロセル通信事業者という用語は、いわゆる電気通信事業者だけを指すものではなく、単に施設の管理者や個人の場合も含むと考える。例えば、乗客や来場者にブロードバンド通信を展開したい鉄道事業者やスタジアム運営団体が、駅やスタジアムに独自にマイクロセルを展開するということも可能になる。また、企業において社屋内にマイクロセル基地局を設置することや、一般住宅において家電量販店で購入した基地局を購入してマイクロセルを開設するということも考えられる。マイクロセル通信事業者は柔軟にセル展開が可能であるという利点を生かし、セルラー通信事業者がセル展開をすることが困難な場所を補完する役目を担うことにもなる。特に、低遅延通信や多数高信頼通信などのブロードバンド以外の性能要件について、採算の見込みが無いなどの理由でセルラー通信事業者によるセル展開が遅れている場所においては、マイクロセル通信事業者が積極的に必要な性能を持つセルを展開できる。今後新たに移動通信システムに割り当てられる周波数は、特定の通信事業者に免許するものだけではなく、一部の周波数帯に登録制度あるいは免許不要制度を導入することにより、マイクロセル通信事業者が基地局を容易に設置することが可能になる。これにより、マイクロセルの自発的な展開と無線通信インフラの拡大が促されると考える。このようにして、セルラー通信事業者はマイクロセル通信事業者が展開したセルを仮想的に取り込み、端末の接続エリアや通信性能を向上させる。一方で、マイクロセル通信事業者は、必要な性能を持つ通信エリアの展開を肩代わりするものである。したがって、本稿で述べるマイクロセル通信事業者の概念は、セルラー通信事業者のビジネス領域を圧迫するものではなく、双方が恩恵を得つつ、新たなビジネスが創生され、生活の利便性を向上させるものである。このような周波数利用の概念が進めは、周波数は通信事業者に割り当てるという概念から共用するという概念に移行し、電波資源をより有効に利用できるため、結果的にビジネス領域の拡大が期待できる。協調制御システムの設計と実証マイクロセルを有効に活用するためには、プライベート空間の限定された地域において運用されているマイクロセルの位置、周波数、通信性能などの運用情報を端末に提供し、端末が必要な時に適切に選択し接続できることが必要である。そのために、マイクロセルの運用情報をマイクロセル通信事業者からセルラー通信事業者に提供し、通信範囲が広いセルラー通信事業者のマクロセルを活用し、その運用情報をブロードキャストすることにより、端末が有効にマイクロセルを利用する方式を提案する。この提案方式について、3GPP規格等に基づき実現可能性を検証し、技術的課題を明確にする。この際、3GPP規格に基づき必要な機能を実現し機能評価を行う必要があるが、5G向けの規格は現在議論中であり確定していないため、4G向けの規格に基づき提案方式を検証することにした。5G向けには、この検証を行いつつ、必要な機能の提案を行っていく。3.1提案方式の概要 提案方式の概要を図3に示す。マイクロセル通信事業者が運用するマイクロセルの情報を配信する手段として3GPPが規定するCell Broadcast Service (CBS)を利用するものとする。Microcell Operator Manager3図3 セルラー通信事業者とマイクロセル通信事業者の協調セルラー通信事業者Aセルラー通信事業者BCBCCBCMOMCBE運用情報配信端末接続マイクロセル通信事業者マイクロセル通信事業者運用情報(位置情報、セルID、周波数、帯域幅、セル選択基準など)eNodeBeNodeBeNodeBeNodeBUEUE6 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)2 地上通信技術の研究開発
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