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まえがきNICTは2008年に打ち上げられた超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を用いた高速衛星通信の研究開発を行っている[1]。2010年にはWINDS衛星のKa帯非再生中継器の1.1 GHz帯域幅を最大限使用して、単一搬送波による伝送速度1.2 Gbpsに成功した[2]。また、SRAM型のFPGAを用いたソフトウエア無線機“再構成通信機”のEngineering Flight Model(EFM)(図1)の開発を行ってきている[3]。これは、軌道上に打ち上げた後でも、地上から回路情報をアップロードすることで回路そのものの変更が可能な衛星搭載用中継器である。この再構成通信機を小型軽量化するため、“16APSK 750 Mbps RF信号ダイレクト変復調装置”を開発した[4]。近年、Inmarsat-5 [5]、KA-SAT [6]、Viasat-1、Echostar 17などの高スループット衛星(HTS)[7][8]において、1衛星あたりの総容量は数10 Mbps~数100 Gbpsとなっている[9]。近い将来、各ユーザリンクのデータレートは、ダウンリンクの数10 Mbps、アップリンクの数Mbpsが数Gbpsに増加すると考えられる。そのため本研究では、WINDS衛星のKa帯の電力と周波数帯域幅の両方が制限された1.1 GHz帯域幅の中で最高のデータレートに挑戦し、再構成通信機の開発で培った技術を活用した16APSK RF信号ダイレクト変調装置の技術を応用した多値変調周波数多重による16APSK-OFDM(16値振幅位相変調・直交周波数多重方式) 及び16QAM-OFDM(16値直角位相振幅変調・直交周波数多重方式)3.2 Gbps RF信号ダイレクト変復調装置を開発した。そして、群遅延ひずみ及び振幅ひずみの改善を行うことによりWINDS衛星回線において6.12×10–3を達成した。これにLDPC誤り訂正機能を追加し準エラーフリーを実現し、データ伝送レート3.2 Gbps広帯域伝送に成功した。さらに、マルチチャネル映像伝送コーデックを接続した10 GbEインタフェースを追加することで、4K超高精細非圧縮映像のUDP/IP伝送に成功した[10]。16APSK/16QAM-OFDM 3.2 Gbps変復調装置 16APSK/16QAM-OFDM 3.2 Gbps変復調装置の全体系統図を図2に示す。また、その諸元を表1に示す。 図3に16APSK/16QAM-OFDM 3.2 Gbps変復調装置の変調器及び復調器の試作ボードの写真を示す。図4(a)に16APSK、図4(b)に16QAMの信号マッピングを示す。図5に示すように、16APSK / 16QAM信号は16個の周波数(サブキャリア:f0〜f15)に多重化し、3.2 Gbpsのデータ転送速度を実現し12図1 再構成通信機エンジニアリングフライトモデル(EFM)3-5 16APSK/16QAM-OFDM 3.2 Gbps RF信号ダイレクト変復調装置を用いたWINDS衛星伝送実験鈴木健治 矢羽田將友 渡辺哲也 星 健一 奥居民生 荒川佳樹 浅井敏男 菅 智茂 高橋 卓 豊嶋守生NICTではWINDS衛星の非再生中継器の1.1 GHzの帯域幅にこれまで高速バーストモデムによって1.2 Gbpsの信号を通した実験を行ってきている。我々は16 APSK/16 QAM-OFDM 3.2 Gbpsの多値変調周波数多重によるRF信号ダイレクト変復調装置を開発した。10 GbEインタフェースを介して4K超高精細映像をWINDS衛星回線に通す伝送実験に成功したのでその概要について報告する。1013 超高速衛星通信技術
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