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まえがきNHKでは、4K/8Kスーパーハイビジョン[1]の大容量信号を衛星によって各家庭に伝送し、放送サービスとして実現することを目指してきた。8Kの映像信号は、7,680 × 4,320の画素数を持ち、既存サービスである2Kハイビジョンと比較すると16倍となる。8Kの情報ビットレートは非圧縮で最大144 Gbpsであり、伝送ビットレートは最新の映像圧縮技術(HEVC)[2]の利用で約80~100 Mbpsを想定している。放送衛星の周波数は国際的な取決めにより12 GHz帯(11.7-12.75 GHz)と21 GHz帯(21.4-22.0 GHz)に割り当てられている。12 GHz帯衛星放送は、現在、右旋円偏波を利用して1チャンネル当たりの占有帯域幅(34.5 MHz)でISDB-S方式により約52Mbpsの伝送容量を確保している。これに加えて、左旋円偏波の利用も可能となり、ISDB-S3方式[3]–[5]で1チャンネル当たり約100 Mbpsの伝送容量を確保し、4K/8Kの衛星放送が可能となった。また、21GHz帯衛星放送は、600 MHz [6]の帯域を2つに分割した300 MHz級の広帯域伝送を想定しており、8K多チャンネル伝送等の放送用大容量伝送路としての利用を進めている[7]–[9]。NHKは、12 GHz帯と21 GHz帯における4K/8K伝送の研究開発に向けて様々な伝送実験を行い、放送衛星を模擬した伝送路としてWINDS衛星を利用してきた。本稿では、12 GHz帯衛星放送を想定したISDB-S3方式の機能検証[10]と21 GHz帯衛星放送を想定した広帯域変復調器の性能検証を、WINDS衛星を用いて行ったので、それらの成果を報告する。12 GHz衛星放送を想定した伝送実験2.1ISDB-S312 GHz帯衛星放送における新伝送方式(ISDB-S3)の主な伝送パラメータを表1に示す。8K放送の伝送容量はHEVC圧縮技術により約80~100 Mbpsとなることを想定している。ISDB-S3はローオフ率0.03、シンボルレート33.7561 Mbaudを採用し、現行のBSデジタル放送(ISDB-S)と比較して周波数利用効率が約17%向上している。また新たな変調方式としてAPSKを採用しており、表1のうち変調方式(符号率)で16APSK(7/9)を使用したとき、約100 Mpbsの伝送容量を確保することができ、12 GHz帯衛星1チャンネル(占有帯域幅34.5 MHz)で8K伝送が可能となった。またトランスポート層における規格では放送通信連携を実現するためにMPEG-H MMTを導入した。物理層における伝送性能とトランスポート層における同12変調方式π/2シフトBPSK, QPSK, 8PSK, 16APSK, 32APSKシンボルレート33.7561 Mbaudロールオフ率0.03情報ビットレート(例)16APSK(7/9): 99.95 Mbps誤り訂正符号LDPC(内符号)+BCH(外符号)LDPC(内符号)符号化率1/3, 2/5, 1/2, 3/5, 2/3, 3/4, 7/9, 4/5, 5/6, 7/8, 9/10制御信号TMCC表1 ISDB-S3の主な伝送パラメータ3-6 SHV伝送実験小島政明 鈴木陽一 河村侑輝 中澤 進 青木秀一 長坂正史 松﨑敬文 小泉雄貴 亀井 雅 大槻一博 筋誡 久 橋本明記 土田健一 斎藤恭一 中村直義 田中祥次 斉藤知弘 木村武史 正源和義NHKでは次世代の放送メディアとして、高精細映像・音声システムである「4K/8Kスーパーハイビジョン」の研究・開発を行ってきており、衛星による4K/8K放送の実現を目指してきた。本稿では、Ka帯広帯域実験衛星「きずな(WINDS)」の利用により、8K多チャンネル伝送の実証や性能評価、方式の機能検証の成果を報告する。1073 超高速衛星通信技術

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