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まえがきWINDS APAA (Active Phased Array Antenna) のアンテナビームは静止軌道から見た地球上の任意の方向に向けることができる機能を有している。このアンテナは送信系及び受信系とも128素子のアンテナ素子、増幅器及びBFN (Beam Forming Network) で構成されており、送信系及び受信系とも同時に2つのビームを形成することができる。2つのビームはアンテナ素子と増幅器を共用として、BFNがビームごとに独立に実装されている。一般的にAPAAは部品点数が多く、しかもKa帯での搭載実績がないため長期間の健全性の確認が必要である。ここでは、APAAの健全性確認の重要項目であるアンテナ素子の給電振幅と給電位相に着目し、その測定方法として軌道上での素子電界ベクトル回転法[1](REV: Rotating Element Electric Field Vector Method)を適用してWINDS APAAの長期の健全性を確認した結果を報告する。さらに、REV法の応用としてAPAAの系統間誤差を補正して利得を最大化する位相補正実験も実施したので報告する。なお、WINDS APAAのREV評価は同時にJAXA側でも実施[2]している。WINDS APAAの概要図1にAPAAのRF系統の機能ブロック図を示す。受信系と送信系とも平面上に配列した128素子の小型のホーンアンテナと増幅器及び2系統のBFN(Beam Forming Network)で構成される。BFNは移送器と合波器または分配器で構成される。各移送器は5ビットのアナログ移送器であり、1ビットごとに11.25°ずつ位相を変化させることができる。受信系は128素子のアンテナの受信信号をBFNの移送器で必要な位相12RX AMP 1RX PS 1aRX AntennaRX PS 1bRX AMP 2RX PS 2aRX PS 2bRX AMP128RX PS 128aRX PS 128bRX BFN aRXBFN b#2#128TX AMP 1TX PS 1aTX PS 1bTX AntennaTX-1BeamTX-2BeamTX BFN aTX BFN bTX AMP 2TX PS 2aTX PS 2bTX AMP 128TX PS 128aTX PS 128b#1#2#128RX-1BeamRX-2BeamD/C, U/C,IF SW#1図1 APAAブロック図3-7 APAA健全性確認実験報告赤石 明 大川 貢 高橋 卓WINDSに搭載されているAPAAの健全性確認実験として、衛星と地上局との間で素子電界ベクトル回転法(REV法)による確認試験を実施した。本稿ではWINDS APAAの概要を述べるとともに、衛星と地上局間の軌道上のREV法固有の課題と解決策、データ取得方法、データの評価方法及び位相補正実験結果を報告する。軌道上REV法の課題として、REV計測時のタイミングが同期していないこと及び大気擾乱による受信信号の変動の問題があるが、前者は1つの位相設定の計測期間に同じ測定を2回行うこと、後者は1回の測定で得られた複数個のデータの平均化処理により問題を解決した。REV実験の評価として振幅と位相のトレンド評価を行った結果、全ての素子の振幅と位相は初期の値をほぼ再現しており、WINDS APAAの健全性が確認された。1153 超高速衛星通信技術

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