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変位が与えられ、合波器で合成することにより受信ビームを形成してダウンコンバータに入力する。送信系はアップコンバータからの送信信号を分配器で128分配して移送器に入力し、移送器を通過した送信信号は128素子のアンテナ素子から放射することにより送信ビームを形成する。REVの概要REV法の特長はアンテナに実装された移送器を利用し、対向するアンテナで振幅測定のみを行うことによりアレー状態での給電振幅と給電位相を同時に測定することができる点である。さらに、アンテナ利得を最大とする最適の給電位相を補正位相として求めることができる。また、REV法はAPAA全素子に適用することにより、素子の故障診断ができる。 REV法の概要を図2に示す電界ベクトルの模式図を用いて説明する。REV法において初期位相設定時のAPAAの電界ベクトル とする。これに対しn番目の素子の位相を実装されている移相器で変化させると、位相回転時の合成電界ベクトル が得られる。合成電界ベクトル の相対電力は余弦関数状に変化するため、得られたデータを余弦関数にフィッティングさせ、その振幅と初期値から素子の相対電界ベクトルである を求めることができる。また、余弦関数の最大値からアンテナ利得を最大とする補正位相を求めることができる。ここで、素子の相対位相とは と の位相差φn-φ0を示す。補正位相とは、着目素子の電界ベクトルを回転させたときの電界ベクトルの最大合成電界の方向と着目素子の電界ベクトルの角度 (Δ0) である。すなわち、着目素子の位相を補正位相分だけ回転すると着目素子の寄与による合成電界が最大となる。これをすべての素子に適用することによりアンテナ利得が最大になる。実施方法4.1REVデータの取得WINDSの軌道上REVは図3に示す測定系で実施した。REVの実施はJAXA側の素子位相制御コマンドにより、WINDSの受信または送信APAAの位相を最小位相設定ステップである11.25°ごとに360°変化させる。受信APAAのREVは送信APAAのビームを関東地方に向けて位相を固定して実施する。送信APAAのREVは受信APAAのビームを関東地方に向けて位相を固定して実施する。衛星の中継器は非再生中継モードである。WINDS APAAのREVは送信APAAと受信APAAが各2系統あるため、合計で4回実施する。各アンテナ素子に実装されている移相器は5ビットの移相器であるため、1ビットあたりの位相の変化は11.25°で、32回移相器を設定すると360°変化する。WINDS REVでは80 msごとに1つの位相状態を保持する。さらにREV開始ポイントの識別のため、位相回転開始時に素子ごとに0°, 112.50°, 236.25°のトランジェント位相が付加される。WINDS REVではアンテナ1素子ごとに移相器を0°から11.25°ごとにプラス方向(進相方向)に348.75°まで32ポイントの位相設定とトランジェント位相設定の3ポイントを含め、合計で35回位相を設定する。REVの計測時間は128素子のREVで約6分間である。さらに、計測開始時刻は衛星側と地上側は同期していないため、計測はREV開始1分前からスタートして、REV終了後は1分延長して、合計8分間とした。さらに、衛星側の位相設定のタイミングと受信側の計測タイミングも一致しないため、1回の計測時間は80msの半周期の40 msで行っている。これにより3 4初期位相時電界ベクトル:∅位相回転時電界ベクトル:素子nの補正位相:Δ0素子nの電界ベクトル:∅最大合成電界素子1の電界ベクトル:∅素子nの相対位相:∅-∅0図2 REV時の電界ベクトル116 情報通信研究機構研究報告 Vol. 63 No. 2 (2017)3 超高速衛星通信技術
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